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客席放浪記

シャクフシハナシその2

2018年2月26日
晴れたら空に豆まいて

 喬太郎、貞寿、奈々福による、落語、講談、浪曲の会。講談や浪曲に馴染みのない人にも、この演芸の楽しさを体験してもらいたいという意図が感じられる番組だ。

 柳家喬太郎の一席目は『禁酒番屋』
 それほどいじっていない古典。しょんべんをしょんべんと言って持って行く男が、「どうぞお調べください」と楽しそうな顔をするところがいい。

 講談の一龍齋貞寿『裕天吉松』から『飛鳥山親子の出会い』。スリの世界から両替商の入り婿になった裕天吉松が子供をもうけながらも、昔の仲間の強請にあい、相手を殺して姿をくらまして数年。飛鳥山でカワラケ売りの少年に出遭うが、それが自分の実の息子であることに気が付くという部分。親子の出会いという女流講釈師にはうってつけのところ。

 浪曲の玉川奈々福は正岡容原作。の『浪花節更紗』
 今では考えられないことだが、昔は浪曲が一大ブームだったことがあり、浪曲師その数三千人だったとか。
 浪曲が大好きな浪太郎が、間違って万年前座の男に入門してしまう。すぐに高座に上げられるが持ちネタは数少ない。すると浪太郎潰しが始まり、前に上がった人たちが浪太郎の持ちネタをすべてやってしまう。危うし、浪太郎!

 トリは喬太郎の二席目。「自分だけやってて楽しい噺をやります」と言って入ったのは、『二階ぞめき』の改作『すなっくらんどぞめき』
 池袋にはかり遊びに行っていると説教をくらった若旦那。小僧の定吉相手に池袋の話題で盛り上がる。といっても話すことといったらは池袋周辺のコンビニであったり、西口にあったものすごく狭い回転寿司屋の話であったりと、きわめて下世話なこと。あの回転寿司は私も何回か入ったことがある。10人と入れない狭さだったと思う。回転寿司のレーンがあまり意味なくて、みんな注文で食べてた。でもネタはよかったよ。
 そして話題は東口地下にあった[すなっくらんど]へ。1997年になくなってしまったというこの場所は、私も学生時代からさんざん利用したところ。立ち食い大集合みたいなスペースで、そばやラーメンは言うに及ばず、寿司でもスパゲティでも丼物でも点心でも、手軽に食べられるものは何でもあった。とにかく立ち食いだから安かったし早くサッと食事ができた。ここでお金を節約して、[文芸坐]へ行って映画二本立てを観たり、[ル・ピリエ]の落語会に行ったりしたものだった。
 と、自分の話を始めると長くなってしまいそうだが、噺の方は今は無き[すなっくらんど]を若旦那のために再現する噺。もう楽しそうな喬太郎。私のなかでの[すなっくらんど]は、ほとんど惨めで情けない記憶しか残っていないが、あの[すなっくらんど]をこれだけ明るく楽しく語れるのは喬太郎しかいないだろう。

 最後に三人のトーク。ネットには書かないでほしいと言われた部分もあるので詳しくは書かない。ただ、講談も浪曲ももっと広まっていい演芸。この会を通じて初めて講談や浪曲を聴いた人も多いたろう。これがきっかけで若い人たちに広まっていったらいいな。
 そして[すなっくらんど]も復活しないだろうか? 復活したら行くかって? もちろん行きますとも。

2月27日記

静かなお喋り 2月26日

静かなお喋り

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