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客席放浪記

亜郎改〆 三遊亭究斗 真打昇進披露公演

2014年3月17日
渋谷区文化総合センター大和田さくらホール

 平日に18時開演というのは、やや早いスタート。開演時間に間に合わない人も多いだろうに。それでも二階席までかなり埋まっているようだ。なにしろ、顔付けが豪華だからねぇ。

 定刻ピッタリに開演。こりゃ内容がみっちりあるってことだろう。緞帳が上がると、中央に高座。客席から見て上手にドラム、下手にピアノ。さっそく三遊亭究斗の一席目、ミュージカル落語『レ・ミゼラブル』が始まる。笑いも多い、まさに落語なのだが、BGMのようにピアノとドラムの演奏が流れ、ときどき突然に究斗が朗々と歌を歌いだす。実を言うと、私はミュージカルが苦手。芝居は好きだがミュージカルは、ほとんど行かない。映画版の『レ・ミゼラブル』でさえ退屈で退屈で、苦痛以外のナニモノでもなかった。しかし、ここに落語という笑いが入って来ると、不思議とあまり退屈感が無い。ジャン・バル・ジャンが神父に諭され真人間に生まれ変わったところまで。「私も生まれ変わって究斗になりました」

 ゲストの落語。まず出てきた柳家喬太郎は「今日のお客さん、どうしていいか掴めずに、楽屋中がわからないと言っている」と。確かに普段の落語好きのお客さんに加えて、ちょっと変わった客層が混じっている。いわゆるミュージカル関係者のような方々。究斗の『レミゼ』を受けて「私も歌いましょうか?」に客席から拍手。結局歌は歌わず『午後の保健室』

 一方、春風亭昇太は、現在稽古中の芝居『ザ・フルーツ』で歌う曲を披露してくれる。グループ・サウンズの話らしい。落語は『リストラの宴』

 春風亭小朝は、究斗の最初の師匠。ここを破門になった過去があるが、究斗はちゃんと、その師匠を呼ぶし、小朝もここに出てくるのだから偉い。落語は地噺『扇の的』。地噺だから、自由気ままな漫談集でもある。「恐山に行った事がありまして、霊媒師がたくさんいる。その夜、街に飲みに行ったら、恐山にいた霊媒師の女性にそっくりの娘がいる。『君、恐山にイタコ?』」

 小朝を破門になって、拾ってもらったのが現師匠の三遊亭円丈。名古屋出身の円丈による名古屋ネタのマクラから『金明竹』。もちろん名古屋弁バージョン。名古屋弁だと「きゃ〜ぎゃ〜みゃ〜」と騒がしいこと(笑)。

 仲入り後は口上。小朝曰く、究斗を破門したというのは間違った報道で、究斗には「辞めてもらった」のだとか。どう違うんだ〜(笑)。

 劇団四季だったときの仲間で、いまや大御所といえる人たちのビデオメッセージが次々と流れる中、裏では舞台の模様替え。

 そしてトリは三遊亭究斗のミュージカル落語『一口弁当』。家が貧しくて弁当を持って来れない少年ヒロシくんが、河川敷の橋の下で暮らすホームレスおじいさん(家なき子・・・家なきじじい)と話すうちに元気をもらう物語。それを歌を交えて語っていくヒューマニスティックな落語。いかにもな絵空事、といえばそれまでだが、心改まる世界。

 落語はトリがサゲを言ったところで終わるが、これはミュージカル落語。アンコールあり。『イマジン』『明日があるさ』の熱唱があって、ようやく幕。

 終演21時30分。やっぱり、たっぷりの公演だった。

3月18日記

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