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客席放浪記

半狂乱。(類類)

2015年9月5日
シアターモリエール

 及川奈央と久下恵美の演劇ユニツト類類。二年前の第三回公演は池田鉄洋作・演出だったので観に行った。いかにも池田らしい不思議なコメディ・タッチの舞台だった。これだけ単発で観れば、もういいかなと思っていたら、第四回公演はゲストにニッチェ(江上敬子、近藤くみこ)を迎えて四人のドラマになると知り、これは行かねばと、チケットを取った。

 前回もそうだったが、客層は圧倒的に男性。それも中年以上。AVからデビューした及川奈央だから、そういうことになるのかもしれない。脚本は北川亜矢子。テレビで『おふこうさん』『女くどき飯』で貫地谷しほりのドラマを担当した人だから、アラサー女性を題材にしたものを書かせれば面白くなるだろうことは想像が付く。この予感が的中。この芝居はアラサー女子(すでに30を超した時点で女子とは言えないと劇中の言葉もあるが)、その年齢の女性の置かれた立場、心の動きを見事に捉えた芝居になっていた。

 物語は1997年17歳の女子高生時代の四人と、十七年後の2015年34歳になった四人の姿が交互に描かれていく。

 17歳の女子高生は希望に溢れ何も怖いものなし。そこに34歳の独身女性教師が臨時に担任として赴任してくる。彼女たちはこの女性教師に”大人”を感じ憧れを抱く。そして17年後、彼女たちはこの教師の訃報を知り、葬儀に参列するために集まる。彼女たちはあのとき34歳だった教師の年齢に達していた。そしてその教師は51歳w@、結婚することもなく、ひとりで死んでいっていた。あんなに希望に溢れていた17年前の女子高生たちは、みんなそれぞれの道で苦労していた。結婚して子供もいるのは江上だけ。及川は玉の輿に乗ったけれど子供が出来ずに悩んでいる。久下と近藤は仕事上の悩みを抱えている。もうこの年齢の女性というのは人生の分岐に立たされることになる。まさにタイトルどおり半狂乱。

 30代になった女性の心理って、男である私には知る由もなかった。自分が30代に突入した時って、人生をそんなに真剣に考えてなかった気がする。ちょうどオートバイに夢中になっていた時でもあり、このまま流れに任せて生きて行けばいいやくらいにしか思ってなかった。男ってそういうところがあるんじゃないか。そのそばで同年輩の女性たちは、真剣に自分の今置かれている立場、これから先の生き方を考えていたのだろう。これはもう男とは生理的にも社会的にも違うんだなぁ。

 アラサー女性が、そんな現実に直面しながらも、逞しく生きて行こうとしている姿。なんだか愛おしい気が湧いてきてしまう舞台だった。

 途中、歌や踊りもあって、さすが江上の歌唱力は群を抜いていた。近藤は台詞に感情を乗せるのが上手くて、感極まって絶句寸前の様子が迫力があった。及川はやっぱり綺麗な人ですね。また、舞台の上で四人一斉に生着替えのシーンがあって、久下が服を脱いだ時には、ドキドキしてしまった。う〜ん、刺激的!

9月6日記

静かなお喋り 9月5日

静かなお喋り

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