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客席放浪記

万獣こわい

2014年4月2日
パルコ劇場

 角田美代子の関わったとされる一連の事件っていうのは、テレビの報道を見たりしても、どうもよくわからない。なんで、そんなことになっちゃったのか、まるで理解できないで、これって小説にしてもらうとわかりやすいかなと思ってはみたものの、そうなると、とんでもないエグい小説になりそうで、あまり読みたくないなと思ったりして。
 『万獣こわい』は、おそらくあの事件をモチーフにして作られているのだろう。

 生瀬勝久、池田成志、古田新太のユニット、ねずみの三銃士による宮藤官九郎脚本のシリーズ。『鈍獣』『印獣』に続く三作目。前二作も、ホラーと笑いをミックスした芝居だったが、今回もその流れに沿ってのもの。しかし、これは明らかに尼崎連続変死事件が発想の原点だろうから、どうしてもあれを思い浮かべてしまって、いや〜な気分になる。

 夏帆は、長年の監禁生活から抜け出してきて、生瀬勝久と小池栄子が経営している喫茶店に逃げ込む。家族全員が小松和重に支配されて、毎年ハロウィンの夜になると、誰かが誰かを殺すことを命じられていたと言う。
 生瀬らに助けられた夏帆は、古田新太に引き取られ、高校を卒業し、OLになるのだが、この喫茶店にもアルバイトにやってくる。最初は、かわいい上にいい子なのだが、次第に態度が変化し行き、言葉遣いが乱暴になり、ついに夏帆を監禁していた男の裁判を取材している池田成志まで巻き込んで、全員を支配するようになっていってしまう。

 確かにエグい話なのだが、笑いの要素が多くて、そんなに怖いというわけではない。むしろゲラゲラ笑いながら観られる。タイトルからもわかるように、落語の『まんじゅうこわい』もうまく絡めてあるのも、さすがクドカン。

 ねずみの三銃士の面々は、いかにも楽しんでやっているなという印象。古田はふんどし一丁の場面あり。得意だね、こういうの。あんまり観たくないけど(笑)。
 小池栄子、今回もいいね。蛸踊りが可笑しい。
 夏帆って女優さん、ほとんど知らなかった。WOWOWの連続ドラマ『ヒトリシズカ』の主役を観ていたくらい。いい女優さんだ。
 小松和重、私の観に行く芝居の客演でやたら遭遇率の高い人。前から気になっていた。なんか自由すぎる芝居をしている、生瀬、池田、古田をうまくサポートしていていた。

 あの現実にあった事件って、人間が人間を支配するっていう、大きなテーマ。それをスルーして娯楽作にしてしまうあたりがクドカンらしいといえるのかもしれない。でも後味悪いね。あの事件の事を思い出してしまって。ということから、どうも前二作ほどスッキリと楽しめたというわけにはならなかったな、今回は。

4月3日記

静かなお喋り 4月2日

静かなお喋り

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