鈴々舎馬るこの会 2015年2月11日 お江戸日本橋亭 鈴々舎馬るこの『長短』は、気の長い人と気の短い人という描き方ではない。気の短い人というのは確かに短気かもしれないが、気の長い人の方は、どちらかというと優柔不断な人、物事を素早く決められない人という感じ。それでいてものの考え方が論理的だったりする。饅頭を勧められて、饅頭を食べると太るし、夕食が食べられなくなるし、朝は爽やかに起きたいしと逡巡する。それでも食べたくて饅頭を二つに割って、今度は右から食べようか左から食べようか迷う。ゲンを担ぐには右からか左からかなんてことまで動員してくる。この気の長い人って、直感型でなくて考え過ぎなのかも。煙草の火のくだりも、袖が燃えるなんていう生易しいものではなくなっているのが、馬るこらしい。 ゲストは立川こしらで『夢の酒』。これは凄い『夢の酒』だね。大旦那が入り込んだ夢の中の世界は、それこそ異次元空間。こんな異様な夢の世界って初めて聴いた気がする。カエルが気持ち悪いし、夢の中の女性が緑色をしていたりする。ううー、悪夢。 馬るこの二席目は『味噌蔵』。旦那はケチな人間というより、何事にも「もったいない」という考えが先に立ち、お金を使えない人という感じに近くしている。これなら理解しやすい。誰だってそういうところあるもの。お金が無いわけじゃなくて、ついつい安く済む方を選択しちゃう。今回ネタおろしだそうだが、その辺の心理をもう少し詰めていくと、この噺、もっともっと面白くなりそう。 仲入り後は、『鼠穴(現代版)』という噺をネタ出ししていたが、急に気が変わったようで、演り慣れた噺を二席。『アメリカのあくび指南』は、ジャパニーズ・カルチャーに惹かれたアメリカ人があくび指南所にやってくるという『あくび指南』の改作。江戸っ子じゃなくてアメリカ人だからもっとけたたましくなる。可笑しいやね。 もう一席は、『日本語学校の桃太郎』。前半は先代痴楽の『ラブレター』の改作かな? 後半は日本語学校で桃太郎の童話をテキストにして外国人に日本語を教える噺。馬るこらしく気持ちよく飛ばしている。 この人の改作は面白い。ハチャメチャにしてしまうのも面白いけれど、『長短』や『味噌蔵』は、それほど崩さなくても、視点の面白さで引っ張っていける。『鼠穴(現代版)』、いつかどこかで聴けるといいな。 2月12日記 静かなお喋り 2月11日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |