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客席放浪記

松之丞ひとり+(プラス)

2016年4月23日
横浜にきわい座

 開口一番は桂たか治『つる』。前座修業頑張ってね。

 神田松之丞のマクラは面白いのだが、ときどき藪を突いてしまうようなことを言ってしまって、「危ないなぁ」と思うときがある。「天狗になってる」と言う人もいるようだが、このくらいの気概があった方がいい。きっとこの人はそういうことをわざと言って自分を奮い立たせているに違いない。今日のマクラも「やばい」んじゃないかと思ったが、「言っちゃえ、言っちゃえ」。決して私も聴いたことをネットに乗せたりしないから。
 一席目は、そんな松之丞の喧嘩を売るようなマクラを受けて『幡随院長兵衛 芝居の喧嘩』。去年の11月にも聴いた演目だが、喧嘩描写が巧み。思わず引き込まれてしまう迫力。目の前で本物の喧嘩が起こっているかのような臨場感だ。

 今のマクラに「なんだか私も共犯者にされた気分」と春風亭一之輔。気合の入った松之丞の芸に対して、とぼけた味で切り返す。噺は『短命』なのだが、あまりの物わかりの悪い男に、短命のわけの説明をする隠居が切れてしまって、もういいから帰れと言い出す。こういう味付けにしたのは、おそらく一之輔が初めてだろう。

 仲入り後は、ネタ出しをしていた『天明白波伝より八百蔵吉五郎』。天明の泥棒の噺なのだが、その泥棒に惚れてしまった街の娘の物語。視点が娘側にあり、イケメンの男にぞっこんになってしまう女心を、実にうまく表現して見せた。娘がどこか現代風だったりするのも楽しい。この噺など、男の私が聴くよりも女性が聴いた方が楽しめそう。松之丞の会に女性客が多いのも、こりゃあ、うなずけるよな。

4月24日記

静かなお喋り 4月23日

静かなお喋り

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