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客席放浪記

神田松之丞独演会其の四
松之丞ひとり〜夢成金


2016年7月26日
博品館劇場

 開口一番前座さんは、橘家かな文『堀之内』。最近の前座さんは恐ろしく達者な人がいるが、かな文もそんなひとり。もう二ツ目でもいいんじゃないかと思うような落語を喋る。それでも、しきたりとして、この期間の修行が課せられているのが落語会。前座修業頑張ってね。

 太鼓が上手く叩けなかったり、前座仕事が大の苦手だったという神田松之丞。前座時代のエピソードを語ったあと、原点に戻ってと、講談における前座噺にあたるという『寛永宮本武蔵伝 山田真龍軒』。この噺、今でも松之丞は得意にしていて、よくかけてるじゃないの。およそマンガチックな演目で、鎖鎌の真龍軒と武蔵が、さしたる理由もなく闘いが始まってしまったり、武蔵が10mも空を飛んだり、手裏剣を使ったり。なんか変だなぁと思うのだが、力技で引っ張って行ってしまう。これだけこの噺を熱演しちゃって、しかも拍手がくる講釈師は、ちょっとほかにいない。

 二席目は、神田愛山が二代目神田山陽からもらい、さらに松之丞がもらったという珍品『赤穂義士銘々伝 不破数右衛門 幽霊退治』。幽霊になって出てきた男の墓を暴いて死体を滅多斬り・・・って、まあなんともスプラッター。あまりにスプラッターすぎて笑うしかないという、講談らしいといえば講談らしい噺。今この噺をやるのは愛山と松之丞だけとのことだが、これ、ほかにやろうとする人、出てくるかね〜。

 仲入り後は、ネタ出しされていた『吉原百人切り お紺殺し』。歌舞伎でいう『籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのよいざめ)』。そのまた脇の噺というのか、序に当たる部分。『吉原百人斬り』の次郎左衛門のおとうさんの妻殺しを描く。
 梅毒で髪の毛も抜け落ちてしまった、かつての妻と偶然に出遭った男。凄惨な殺しの描写になるところで、照明、鳴り物も使っての演出入り。力の入った高座に引き込まれてしまった。

 33歳。二ツ目になってまだ4年。まだ若くて勢いのある今の松之丞、絶対に観ておくべきだと思う。

7月27日記

静かなお喋り 7月26日

静かなお喋り

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