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客席放浪記

神田松之丞独演会<其の五>

2016年9月20日
東京芸術劇場シアターウエスト

 開口一番前座さんは三三の弟子、柳家小かじ『二人旅』。再来月二ツ目昇進が決まったそうだ。あと少しですね。

 今日は旅の噺ということで、小かじにもあえて旅の噺にしてもらったそうだ。そして神田松之丞の方はというと『慶安太平記』から7話の『宇都谷峠』と8話『箱根の惨劇』。増上寺の僧侶伝達が京都まで五日間で金を届け、また五日間で帰ってくる旅の部分。

 マクラは三日前の朝練講談会で知った、15日間のスペイン旅行に行っていた話。あのときは旅の内容については一切明かさなかったが、なんとなんと新婚旅行。それもスヘイン聖地巡礼をやってきたと知ってびっくり。聖ヤコブの眠るサンティアゴ・デ・コンポステーラまで最低100km以上歩く。ちょうど日本のお遍路さんのようなもの。巡礼手帳にスタンプを押してもらうというのも、御朱印帖に御朱印をもらうような感覚なのかもしれない。この体験談のマクラを聴いていて、私もすっかり興味を持って行きたくなってしまったのだが、異国のスペイン。なんかかったるい。30代だったらやったんだろうけど。今はもうスペインに行くということだけで面倒に思えてしまう。歩くのは好きだけれど、私には今年やった伊豆急全線ウォーク77kmの方が向いていそう。

 『宇都谷峠』は往路の部分。伝達が西へ向かっていると、大金を持って歩いているなと見抜いた男が一緒に旅をしようと持ち掛けてくる。伝達は自分が持っている大金が目当てなのじゃないかと警戒するが、男の目的は別のところにあった。これがやがて高坂陣内だと知ることになるのだが。

 『箱根の惨劇』の方は、三日前の朝練講談会でもやっていた。今日のための練習だったわけね。続けて聴くと、『宇都谷峠』での高坂源内とのやりとりが、そのままゴマの蠅とのやり取りと被って、「どこかで聞いた台詞だな」とデジャブ感いっぱいの笑いになる。また伝達のキャラが『宇都谷峠』とは変わってしまっているのは、講談ではよくあることだそうだ。そういう自由さ(いい加減さ)も講談の可笑しさではあるなぁ。

9月21日記

静かなお喋り 9月20日

静かなお喋り

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