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客席放浪記

神田松之丞新春連続読み
゛畦倉重四郎完全通し公演”第一夜


2017年1月4日
レフカダ新宿

 神田松之丞が『大岡三政談』のうち、師匠松鯉直伝の『畦倉重四郎』全19話を六日間連続読みするという企画。こういう機会でないと、なかなか物語の全貌は掴めないから、遠し券を買い、毎日通うことにした。

 なにしろ極悪者が主人公の噺で、終始重たい展開になりそうだから気合を入れて行ったらば、なんと『畦倉重四郎』に入るのは明日からで、今夜はいわば前夜祭のようなものなんだそうだ。

 まずは松之丞が出てきて、プロジェクターも使い、『畦倉重四郎』とは、どんな噺なのかの解説。
 続いて、なぜこの連続読みを企画したかの説明。自分は寄席や落語会に出る時は、受けのいいネタ5〜6席を使いまわしているが、きちんと連続読みをしたいんだと言う。偉いぞ、松之亟! 今の講釈師のなかには、抜き読みだけで連続読みはやらないと宣言している人もいると聞く。まだ若いし体力があるんだから、松之亟が連続読みに挑戦することには大きな意味があるはずだ。私もこの六日間は、体調を整えて聴きに行こう。
 最後に、これからやりたいと思っている演目が披露された。おお、面白そうなのが並んでいる。『徳川天一坊』も全話憶える気らしい。これまた連続読みが期待できそうだ。

 今日は『畦倉重四郎』に入らずに、別の噺を三席。まずは、これから人殺しの噺ばかり続くことになるので、なにか笑える楽しい噺をということで、『曲垣と度度平』。名作『寛永三馬術』で、見事愛宕山を馬で登って見せた曲垣平九郎の元に、雇ってくれとやってきた度度平との、豪快な師弟関係が楽しい。

 ニ席目は、照明を落として『真景累ヶ淵 宗悦殺し』。盲人が得意だという松之丞。『畦倉重四郎』にも重要な役で盲人が出てくるということで、これはいわば名刺代わり。確かに按摩の役はいい味を出している。。

 三席目、これも『大岡三政談』から、『村井長庵 雨夜の裏田圃』。松之丞は伯龍のこの噺を聴いて講釈師になろうと決意したそうだ。私は松之丞では、去年の朝練講談会で聴いて二回目。凄惨な殺しの場面は土砂降りのなか。まるで石井隆の映画のよう。
 普段、一般の人相手の高座では、受けを取りに行く芸風の松之丞。実は、本当はこういう講談がやりたかったのかもしれない。

1月5日記

静かなお喋り 1月4日

静かなお喋り

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