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客席放浪記

神田松之丞新春連続読み
畦倉重四郎完全通し公演”第二夜

2017年1月5日
レフカダ新宿

 昨夜のイントロダクション公演に続いて、いよいよ今日から五日間に渡る『畦倉重四郎』連続読みが始まる。始まる前に、観客に演者の集中力が途切れるからとの理由から、「寝ないでください」、「咳き込まないでください」、「あまり頭を動かさないでください」といったお願いのアナウンスが流れる。
 仲入り休憩では、係から、希望者に喉飴や携帯懐炉が支給されるといった処置がなされる。聴く方も演じる方も決死隊の様相。お客さんから、眠気覚ましにとコーヒーキャンデーが係の人に差し入れられ、これも配られた。「寝るな〜! 寝るんじゃないぞ〜! 死んでしまうぞ〜!」。ここは雪山か!

第一話『悪事の馴れ初め』
第二話『穀屋平兵衛殺害の事』
〜仲入り〜
第三話『城富嘆訴』
第四話『越前の首』

 物語が始まったばかりのころ、重四郎はそれほどの悪党になるような風には見えない。幸手の宿で父の跡を継ぎ、剣術や手習いを地元の人に教えているのだから、まさに文武両道の武士というイメージ。しかも誰から見てもいい男だというのだから、そのまま行けば、正義のヒーローにもなれたはず。それが土地のならず者、火の玉三五郎に頼まれて家を短時間貸したのがいけなかった。三五郎は重四郎の家を賭場として利用していた。それを知ったときにキッパリ縁を切ればよかったのに、反対に重四郎の方が博打に溺れてしまう。そこから三五郎とつるむようになり、剣術や手習いを教えることもおろそかになって行ってしまい、村での評判はどんどん悪くなる一方。
 重四郎の父畦倉重右衛門は、この幸手宿の穀物問屋、穀屋平兵衛の命を救ったことで平兵衛の世話になることになったわけだが、父亡きあとの重四郎の変貌ぶりに平兵衛は快く思っていない。ある日、重四郎が平兵衛のところに挨拶に行くと、そこには江戸から帰って来た平兵衛の娘おなみがいた。このおなみに惚れた重四郎は、おなみに恋文を渡す。それを横から女中が手に入れ、それがさらに平兵衛の商売仲間、杉戸屋富右衛門に渡り、富右衛門から平兵衛に告げ口されたから、さあ大変。重四郎は出入り禁止にされてしまう。
 親の平兵衛の気持ちもわからないではないけれど、これで、おなみがイケメンの重四郎に惚れて、そういう仲になってしまうという展開もありそうだけれど、これを機に出入り禁止とは、重四郎だって面白くないよなぁ。
 松之丞の講談は今まで何席も聴いているが、不思議と今まで女性の登場人物はほとんど出てこなかった。おなみ、そして女中と、続けて女性が出てきて、松之亟は女を演じるのも上手いと感じた。
 いやね〜、男が書いたラブレターを他人に読まれるって、そりゃあ恥ずかしいことだよ。笑いものにされているのと同じ。このあたりは重四郎に同情してしまうなぁ。
 火の玉三五郎がたまたま手に入れた、杉戸屋富右衛門の煙草入れを譲り受けた重四郎は、夜道で平兵衛を待ち伏せ、殺害。富右衛門の煙草入れを現場に残す。
 この殺害場面の凄惨なこと。一刀両断に斬ったあとに、さらに首にとどめをさす。まさに鬼気迫る迫力だった。
 残された煙草入れから、富右衛門に容疑がかかり、拷問にかけられて富右衛門は、やってもいない罪を被り牢に入れられることになる。
 この石抱きの拷問も聴いていて辛い。すぐにでも、やってもいない罪を認めてしまいそう。
 富右衛門には盲目の息子がいる。江戸の鍼医の養子になっている城富だ。父親の犯行とは信じられない城富は、老中安藤対馬守にこのことを打ち明ける。対馬守はこのことを大岡越前守に伝えるが・・・。
 おおっ、ついに出て来ました、大岡越前! 第三話での登場だった。それで、改めて越前はーの取り調べが始まる。さすが越前、富右衛門は下手人ではないと見抜く。しかし、何を思ったのか越前は富右衛門を釈放しなかった。
 ある日、城富は、自分の父富右衛門が小塚原で獄門打ち首となり、曝されていると知る。城富は越前に、「もし真犯人を見つけたら、あなたの首をくれ」と迫る。越前はそれを受け入れるのであった。
 ここまでが第四話。これから先、どうやって城富が父の無実を証明するのか、そして重四郎はこのあと何人の人を殺すことになるのか・・・って、おいおい越前、黙って見ている場合かよ!

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