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客席放浪記

神田松之丞独演会+プラス

2017年7月23日
横浜にぎわい座

 開口一番前座さんは桂竹輪『動物園』。虎の皮を被った男のところにライオンが近付いてくる。「虎がブルブル震えてるよ。これがほんとのトラブルだ」。『動物園』は営業受けするネタで、前座、二ツ目の定番ネタでもある。これが始まると「ああまたか」という気になってしまうのだが、竹輪さんいいね。いろいろ工夫も入れているけど聴きやすいし、これがなんとも面白い。いいものを持っている人とみた。前座修業頑張ってね。

 神田松之丞一席目、次に上がる喬太郎を褒め殺しにかかった。喬太郎がいかに人に気を遣ういい人物なのかを褒め捲り、「こういうところにゲストとして出てくれると、たいしたネタじゃないをかけて、それでそこそこに打ちのめしてくれる」と言い出すものだから、袖から柳家喬太郎乱入。「ネタ選びが難しくなってしまうだろうが!」
 こうして講談としての定番ともいえる『扇の的』。さすがに若くて勢いのある講釈師は違う。那須の与一が馬に乗って海に入っていくところの描写は迫力満点。放った矢が扇向かって迫っていくところを引っ張りに引っ張って、「お時間」と一旦切って、改めて最後まで。

 さあて、たいしたネタじゃなくて、そこそこに打ちのめしてくれるという松之丞のリクエスト、喬太郎がどうこたえるかと思えば、『任侠流山動物園』。なるほど三遊亭白鳥の豚次で来たか。ほとんど動物しか出てこないこの噺、喬太郎は案外真剣に、それでいて楽しそうに取り組んでいる。今やいろいろな人がこの噺をやるようになったが、喬太郎くらい動物だということにこだわった所作をする人はいないだろう。「動物の了見になる」という柳家の芸とはこれだというのを見せてくれる。

 仲入り後、それでは自分も新作をということで松之丞も自作の『トメ』。私がこれを聴くのは二回目。瀧川鯉八のやる新作にも似た味わい。講談と言うより落語に近い。張り扇も一回しか使わないし。しかし「私がやるのはどんなものでも講談」と言い切る。

 三席目は『小幡小平次』。私は初めて聴く噺だと思ったら、これは中川信夫が映画化した『怪異談 生きてゐる小平次』と同じ噺なのね。客電を落としスポット一本にして、迫力の怪談。松之丞、この先も夏はお化けで稼ぐ講釈師らしい講釈師になっていきそうだ。

7月24日記

静かなお喋り 7月23日

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