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客席放浪記

玉川太福・神田松之丞二人会
蝋燭寄席

2017年8月15日
日本橋社会教育会館
秋は腹・やきもち

 開口一番前座さんは、田辺いちか『阿部忠秋 隅田川乗っ切り』。前座修業頑張ってね。

 神田松之丞、以前よりも太ったそうで、現在91キロだそうだ。そんなに太っているように見えないのだが、「太るといいことはない。キレが無くなった」とボヤく。
 一席目は『寛永宮本武蔵伝 狼退治』。佐々木巌流との戦いのために東海道を行く宮本武蔵の旅を描いた全十七席の四席目。箱根の山の出来事。以前、女流講談師で聴いたことがあるが、途中で切ってしまった。ようやく全編が聴けた・・・のだと思うが、これ、もう少しあるのかな?

 玉川太福(曲師・玉川みね子)の一席目は『茶碗屋敷』。落語の『井戸の茶碗』と同じ噺。ただ細部はかなり違う。落語にある冒頭の、長屋住まいの浪人者とくずやとのやり取りはなく、いきなり細川家の屋敷の前にくずやが通りかかるところから始まる。くずやから買った観音像から五十両が出てくると、女房に見張りをさせ(結婚しいるのだ)くずやを捜し出す。くずやと一緒に浪人者のところに行く。五十両を返すと代わりに桐の箱に入った茶碗を貰う。この茶碗で客にお茶を出すと、これが実は高価な美術品の茶碗だということが発覚。殿様に見せると買い取りたいと言い出すが、代わりに浪人者を家来にしてくれということで大団円。落語版よりスッキリしているし、笑えるし、面倒な人間たちでもない。落語版より私は聴いていて楽だった。最近、もう落語版は聴くとうんざりしてくる。

 太福二席目は『銭湯激戦区』。熱い銭湯、ぬるい銭湯、電気風呂の三湯。

 松之丞の二席目は『牡丹灯籠 お札はがし』。このあと[やきもち]の蝋燭寄席に行ったら、こちらでも松之丞の『お札剥がし』だった。先月も松之丞で聴いているから、短期間に三回聴いたことになる。
 この噺は愛山に教わったもので、愛山は怪談を含めた世話物では張り扇を使わないそうで、自分もI愛山から教わった世話物は張り扇を使わないことにしたと、張り扇を尺台の下に隠してやった。もっとも張り扇を使わなくても扇子でビシャリとやっていたから、あまり変わりはないか。ちなみに、[やきもち]では張り扇を使っていた。
 新三郎は顔もよくて金も持っている。お露に遭ったあとも、それほどお露に執着はなかったのではないか。一方でお露の方でも焦がれ死にをしたわけでもなく流行りの病での死亡。お米も看病疲れで死んでしまう。二人が死んでから新三郎は幽霊になったふたりに遭い、お露と関係を深めていく。ふたりが幽霊だと知った新三郎は幽霊を封じるお札を貼ってしまう。伴蔵の手引きで家に入ったお露は新三郎に未練を残していたが、お米は新三郎に恨みを抱いていて取り殺す。ただの美しい恋物語ではなく、怪談により近い味わいになっていると思う。

8月16日記

静かなお喋り 8月15日

静かなお喋り

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