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客席放浪記

神田松之丞独演会(其の八)松之丞ひとり〜夢成金 昼の部

2017年8月26日
イイノホール

 開口一番前座さんは、春風亭一猿『弥次郎』。前座修行頑張ってね。

 神田松之丞が昼夜で、ネタ下しの怪談をやる独演会。昼は『番町皿屋敷』、夜は『怪談乳房榎』。どちらも師匠神田松鯉の得意とし、大切にしている演目だが、いよいよ松之丞もこれを演る時期が来たらしく、教えてくれたものらしい。
 何しろ、まだ芸歴十年だが、講談で五百人規模のイイノホールをゲストなしで昼夜満員にしてしまうなんていうのは、松之丞以外、誰もいないのだから。

 一席目は、怪談の前の笑えて威勢のいい派手な噺ということで『芝居の喧嘩』。今は落語でも演じられるようになったが、元は講談のネタ。松之丞は講談にこれを取り返そうとでもするように、勢いよく読み上げる。サゲなどなく、いいところまできて「お時間」とするこの噺は、まさに講談の世界。

 二席目はいよいよネタ下しの『番町皿屋敷』。照明を落とし、声のトーンも落として語る凄惨な噺も、松之丞は上手い。無残にも殺されて井戸の中に入れられたお菊が、いよいよ幽霊になって出てくるところでは、はめものも入って、おどろおどろしく。
 講釈師は夏はお化け、冬は義士で飯を食うというが、松之丞も着実に怪談の演目を増やしているようだ。

 その冬の忠臣蔵がらみか、仲入り後の演目は『中村仲蔵』。仲蔵が七歳で歌舞伎の世界に入ってくるところをプロローグに、最後は大喝采を浴びるエンディングまで。「この噺を講談でやったら、こうだ」という自信に満ちた一席だった。

8月27日記

静かなお喋り 8月26日

静かなお喋り

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