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客席放浪記

神田松之丞新春連続読み 寛永宮本武蔵伝三日目

2018年1月5日
CBGKシブゲキ

 宮本武蔵と柳生十兵衛が戦うなんていうのは、山田風太郎の『魔界転生』くらいのものだと思っていたら、なんと『寛永宮本武蔵伝』でも、武蔵と十兵衛は戦うのだった。
 第7話『柳生十兵衛』
 『魔界転生』での十兵衛と武蔵の戦いは、読んでいて圧倒される名場面だったが、『寛永宮本武蔵伝』の方の十兵衛はというと、あまりな設定。なんともう高齢で、気がふれている。というよりはっきり言ってしまうとボケかけている。しかし武術の腕前はボケているからこそか、相手に容赦がない。二刀を構える武蔵に対し、十兵衛は何も得物を持たぬ丸腰。はたして決着は。
 ちなみにこの噺には、『魔界転生』でこれまた武蔵と戦った、幼少時代の荒木又右衛門も出てくる。

 第8話『吉岡治太夫』の文字から、いよいよ吉川英治版『宮本武蔵』で読んだ、吉岡道場との遺恨の噺に進むのかと思ったら、ここには武蔵は出てこない。しかもこれは時代を遡った前の噺。京に道場を開いた剣の達人、吉岡治太夫だったが、門弟が一人も入らない。そこに清十郎という商家の男が弟子入りしてくる。清十郎はめきめき腕を上げるが治太夫からは、絶対に他流試合を禁じられている。そんなある日、清十郎はひょんなことから別の道場の門弟たちと勝負することになってしまう。
 武蔵は噺に出てこないが、これはこれ一席だけ独立させても充分にいい面白い。いや、荒唐無稽な『寛永宮本武蔵伝』のなかでも、おそらくこれだけ毛色の違う一席なのだろう。
 ひょっとすると治太夫は、この清十郎を養子にして吉岡清十郎となり、吉川英治版で、吉岡一門で最初に武蔵と戦う相手となるのかと思っていたら、そうではなさそう。第8話は、治太夫が結婚して又三郎という子供が生まれるところで終わっている。第11話が『吉岡又三郎』になっているから、そこで戦うことになるのだろう。とすると吉岡清十郎も吉岡伝七郎も出てこないということか。

 第9話『玄達と宮内』は、手裏剣の名手玄達に飛び道具を払い落とす術を学び、そのあと弓矢の達人宮内と対決する。かなりコミカルに作られた一席。

 第10話『天狗退治』は、夜道を歩く侍に悪さをする天狗が出るといわれる道を、ならば天狗を退治してやろうと進んで行く武蔵。もちろん天狗などはおらず、腕試し刀試しが目的の侍の仕業なのだが、この一席の切れ場は、吉岡又三郎が登場したところまでで、第11話『吉岡又三郎』に続く。う〜ん、明日が待ち遠しい。

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