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客席放浪記

講談春秋

2018年4月4日
日本橋劇場

 二ツ目にして440のキャパのコヤを完売してしまう。神田松之丞人気は留まることが無い。ゲストで上がった立川龍志が松之丞を評して、「昔の講談と違う」、「落語のようなところがある」と言っていたが、まさしくそうかもしれない。私がこれまで講談をそれほど面白いとは思えず積極的に聴きに行くことをしなかったのを、松之丞の登場によって、講談ってこんなに面白く喋ることができるんだということを知った。不思議なもので、若い松之丞によって講談の面白さがわかってきて、少しずつ講談を聴くようになってきた。

 神田松之丞一席目『曲垣と度々平』は立川談志も落語にしてやっている。あとから上がった龍志がそのことに触れるかなと思ったが、スルーしていた。『寛永三馬術』でよくかけられる『愛宕山 梅花の誉れ』の次に当たる部分。見事愛宕山の急傾斜86の石段を馬で上って下りて来た曲垣平九郎が、讃岐丸亀城に戻ると、度々平と名乗る男が馬の世話をさせてくれとやってくる。この度々平という男が突拍子もない男で、侍相手に大立ち回りをしてしまう噺。いかにも談志好みの噺で、談志も取り上げたくなったのだろう。その談志を好きだった松之丞は、度々平のキャラを松之丞らしい、すっ呆けた人物に描いていて面白い。この事件で浪人になってしまう平九郎と度々平の物語、まだ講談、浪曲で先かあるそうだが、『愛宕山梅花の誉れ』なんかより人間らしくて面白そう。

 松之丞が二ツ目に上がったとき、そば屋の座敷で開いた会のゲストで上がったという立川龍志。そのときは松之丞のリクエストで『義眼』をやったそうで、龍志も得意にしているらしく私も龍志で聴いたことがある。ただ私はあの噺苦手。今日は季節のネタ『花見の仇討ち』

 松之丞二席目『慶安太平記 宇都谷峠』は、一昨年の9月『神田松之丞独演会』で初めて聴いて、そのあとCDになったものも何回か聴いて、すっかり憶えてしまった。ちょうど伝達が宇都谷峠に差し掛かったところで、それまで客電を暗くしていたのに加えて高座の照明も一旦全部落として真の闇にしてしぱらくそのまま。こんな真っ暗な劇場体験は初めてだった。

4月5日記

静かなお喋り 4月4日

静かなお喋り

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