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客席放浪記

2012年6月23日 三田落語会・昼の部(仏教伝道センター)

 開口一番前座さんは春風亭一力『たらちね』。頑張ってね。

 今席は、鯉昇、一之輔二人会だが、この春の一之輔の真打昇進を立てて、一之輔がトリを取る。

 その春風亭一之輔は、真打披露興行の裏話をマクラにして『麻のれん』
 按摩さんが枝豆を食べる所作がいい。口に含みながら「二つか」「空か」と呟くのが効いている。ほんとにこの人は、無言と台詞の対比をうまく使っている。

 「縁起を担ぐなんて申しますが、最近の人はあまり日本茶をお飲みにならないようで、茶柱を知らない人もいらっしゃる。今はティーバッグになっていまして、袋が破れてお茶の茎が湯呑みに流れ出していますと、『悪い事の前兆』なんて思ったりするそうで」と瀧川鯉昇『佃祭』
 てんやわんやになる噺だが、鯉昇は持ち味の、のほほんとした語り口で噺を進めていく。やきもち焼きの女房も、そんなにキツくないのが、いい気分で聴いていられる。

 仲入り後、瀧川鯉昇二席目。「あまり作業が早いと信用を失うようでして、お坊さんのお経なんていうのもそうですし。床屋さんも、私の頭なんて5分で終わりそうですが40分かけてやってくれます。手を抜いたんではないというんでしょうか? 寝た振りをしてたら、耳のところでハサミの音だけ聞かせていました」
 「金返せよ」とやってくる男に、「空気読めないねえ」と返す住人。部屋はホコリだらけ。「この暮らしから抜け出そうという気ないの?」 「金が無いの」 「向上心ってないの? なんとかしようと思わないの? 結婚しようという気はないの?」 「しようという気はあるけど、来ようという人に会ったことがない」と、『持参金』の世界が始まる。こういう噺も、鯉昇が演ると、のほほんとして嫌な感じにならない。これが落語なんだよね。

 春風亭一之輔の二席目は『らくだ』。一時間たっぷりの長講。らくだのアニィが、そんなに凄みは無くともドキリとするようなことをボソッと言う。「(突然丁寧な口調になって)こっちへ来てください。耳をかしてください・・・自分で自分のハラワタを見た事あるかい? きれいだよ」 こんなこと言われちゃったら、怖いやなあ。

6月27日記

静かなお喋り 6月23日

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