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客席放浪記

桃太郎・喬太郎二人会 若手抜擢神田松之丞

2016年8月3日
日本橋公会堂

 開口一番前座さんは、春風亭昇市『桃太郎』。前座修業頑張ってね。

 昔々亭桃太郎はいつもの、とぼけた小噺集はやらずに、先月故郷に里帰りしたというマクラを話し出した。そこから若かった頃に東京から来たお嬢さんと親しくなってという、ノロけ話というか自慢話というか、こんな桃太郎も楽しい。
 噺は久しぶりに聴く『お見合い中』。最近これに当たらなかったけれど好きな噺なんだ。あの桃太郎の、いささかぶっきらぼうな話し方が、ぴったりだと思うし。

 今回、芸恊からひとり呼ぼうということになって、桃太郎は面白いと思える落語家が誰も思い浮かばなかったそうだ。それで選んだのが神田松之丞。講談。しかもまだ二ツ目。名前を三人並べて三人会とするのは勘弁してくださいと、松之丞から言いだして、今回のタイトルに落ち着いたようだ。「
 「『講談って、観たことも聴いたこともないけど、つまんなそう』と思われがちですが」と話し出して、わかりにくいといわれる修羅場読みの例をやってみせて、それを笑いに変えてしまう。おそらく松之丞を初めて観るお客さんが多そうな会なので、こういうときのほぼ定番『谷風の情け相撲』をビシッと演って下りた。これでまた松之丞のファンは増えただろう。

 柳家喬太郎は、これがネタおろしだという『夢の酒』。喬太郎は。この噺に出てくる、若旦那、嫁さん、大旦那が、みんなかわいいとネットに書いているが、なるほどそういわれてみれば、そうだな。それを喬太郎はしっかり踏まえてこの噺を組み立てている。とくにお嫁さんの子供みたいなかわいさは喬太郎ならでは。酒好きの大旦那が冷はいけません、必ず燗をしてと必要以上に繰り返すことにより、サゲが生きる。喬太郎は決して派手な噺ではないとも書いているが、喬太郎にかかると大きな仕種で笑わせる噺ではないが、充分に派手に聴こえてしまうのだから面白い。これはサゲが命の噺でもある。大旦那のひと言が決まったとき、「かっこいい」と思える落語家と、そうでない落語家は、大きく分かれてしまうだろう。喬太郎のは、かっこいい。

 仲入りのあと、桃太郎、喬太郎、松之丞によるトークショー。というより、桃太郎が言いたい放題に落語界に関して過激な発言をして、それをふたりが、押しとどめつつ、懸命にフォローを入れるという、いつものやつ。過激すぎてネットには書けない。

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