紫式部ダイアリー 2014年11月26日 Parco劇場 清少納言(斎藤由貴)と紫式部(長澤まさみ)の二人芝居。といってもなぜか舞台は現代。ホテルのバーで二人が渡り合う。 清少納言は『枕草子』で有名な、現代で言えばエッセイスト。紫式部は『源氏物語』で有名な小説家。清少納言は、自分より若く美人で売出し中の紫式部の存在が気になっている。翌日、文学賞の選考会があり、二人とも選考委員のひとり。その前の夜にバーで待ち合わせて、ちょっと話そうということだったらしい。紫式部はシングルモルト派で、ガンガン豪快に飲みまくる。清少納言は女性らしくカクテル。二人は翌日の選考会の有力候補、和泉式部を押すかどうか、講評をどちらがするかといった話題から入るが、その後、話は別の方向に向かいだす。 これは三谷幸喜の、作家についての物語。深読みをしようとすると面白い。清少納言と紫式部の関係は、ライバルの物語とも取れ、とすると、さしずめ清少納言は三谷幸喜で、紫式部は宮藤官九郎。芝居の脚本・演出ではベテランの三谷幸喜の前に、突然人気が出てきたクドカンの存在。クドカンは若く、俳優もこなし勢いもある。そんな三谷幸喜の、あとから出てきた才能へのライバル意識が描かれているかのよう。 そうかと思うと紫式部を借りて、ストーリー作りのコツを語りだす。エッセイストで物語の作り方を知らない清少納言に、面白いストーリーは、設定をこう発展させるんだという、フィクションの作り方講座が始まる。私はこの部分が一番面白かった。これは実際に物語を作る人だけが語れること。『源氏物語』を例にして、三谷幸喜が面白い物語の作り方を解説してくれているのだ。 ほかにも、締切に間に合わないで編集者に言い訳する所なんかも三谷幸喜自身を彷彿とさせて面白い。電話の陰で一芝居打つなんていうのも、これは実際にやっていることなんじゃないかと思えてくるし。 さすがに面白いストーリーでウェルメイドな芝居作りをする三谷幸喜らしく、ラストは暗くならず、ちょっびりいい気持ちになって終わる。最後に清少納言が紫式部の書いたものを読んで、どういう反応をしたのかは観客の想像に任せるあたりも、上手い幕切れ。 ちなみにいろんなお酒の名前が出てきたが、三谷幸喜はあまりお酒を飲まない人のはず。どっかで調べてきたのだろうか? 清少納言がどのカクテルを飲もうか迷っているときに、紫式部が勝手に注文してしまう。そのカクテルの名前は、グリーンアラスカ。私はこのカクテルを知らなかったので、帰宅してから調べてみたら、かなりアルコール度が高いカクテルのようで、何も知らない清少納言を酔っぱらわせてしまおうという紫式部のイタズラだったのかもしれない(笑)。 11月27日記 静かなお喋り 11月26日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |