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客席放浪記

2012年7月17日落語睦会〜向日葵のゼントルマン(国立演芸場)

 開口一番は、二ツ目の柳家花いち。マクラも板に着いてきたようで『壺算』へ。

 瀧川鯉昇は、師匠の春風亭柳昇の飄々とした味をうまく受け継いだ人だと思う。とぼけた味わいのマクラでうまくお客さんを掴む。青函(生還)トンネルなんていう駄洒落は、古いっちゃ古いんだが、それが鯉昇が演ると妙に可笑しい。
 ネタは『質屋庫』。幽霊が出るらしいので確かめて欲しいと言われて、後ずさりならぬ、横向き逃げ腰になる熊さんの様子が、これまた可笑しい。こういうフラのある人は、何をやっても可笑しい。

 仲入り後が入船亭扇遊『試し酒』。五升の酒を飲めるか飲めないかの賭けをする噺だが、まずは一升を息もつかせず飲んでしまう。そういう飲み方をしていると身体に悪いよ。当たり前の話だが、病気をしてからの私は、ついつい心の中で突っ込んでしまう。まあ、豪快なホラ話だけど、よい子は真似しないように。

 先代春風亭柳好に弟子入りするか、柳家小三治に弟子入りするかで迷った挙句、柳好はもう弟子を取らないと知り、小三治門下に入ったという柳家喜多八。出てくるなり「落語をやらせていただきます」と言って笑いを取る。これは先代柳好のお馴染みの言い方。「前座のときに、こう言って始めたら楽屋に帰って、先代の柳朝師匠にこっぴどく叱られまして」というエピソードを語り、ラムネや蚊帳といった夏の風物から『青菜』へ。
 夏という季節が色濃く出ている噺で、私も大好きだが、この季節はこの噺をよく耳にする。鯉の洗い。その下に敷いてある氷。夏には堪らないねえ。柳陰という酒も出てくる。私は飲んだ事がないが、この噺の時代には一般的だったのかも知れない。おかみさんに「柳陰って知ってるか?」と聞くと、「直しだろ。昨日や今日の酒飲みじゃないよ」と言われる。凄いおかみさんだねえ。ウフフ。
 どうやら、味醂を焼酎で割ったようなものらしいのだが、これこそ真夏に氷を入れてチビチビとやりたいものだなあ。

7月18日記

静かなお喋り 7月18日

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