玉川奈々福 喬太郎アニさんをうならせたい 2018年3月15日 紀尾井小ホール 喬太郎をゲストに迎え、玉川奈々福が新作浪曲を一席ネタ下しする会の三回目。過去二回は浪曲のなかに喬太郎を登場させる噺を作ったが、前回「今度はオレから離れて噺を作って欲しい」と言われていた。さあてどうするのかと思っていたら、今度は喬太郎が大好きなつかこうへいの作品から『熱海殺人事件』を浪曲にした『浪曲 熱海殺人事件』。 警視庁内の拘置所(ってあるのかな?)に入れられている犯罪者の描写から、木村伝兵衛の取調室へ。木村伝兵衛は女という設定。これは『売春捜査官』バージョンか? 婦人警官とのやりとり、赴任してきた熊田留吉とのやりとりといった部分を経て、容疑者大山金太郎の登場。なんと『マイウェイ』ではなく、ラップで登場する。このとき、さすが曲師が若い沢村美舟だけあって、ラップに合った三味線を付けた。これは年の行った曲師ではうまくいかなかったかもしれない。さらに「海が見たいと 言ったのさ」 「涙堪えて 言ったんだ」 「肩を震わせ 泣いたんだ」 「一人で見るのが 怖いから 一緒に見ようと 泣いたんだ」と七五調の浪曲にしてうなる。いいねいいね。 さあいよいよ大山金太郎と婦人警官で事件を作り上げるところになったところでお時間。惜しいな〜。完全版も作ったそうで、どこかでこの後も聴きたいものだ。 次に柳家喬太郎が上がると、『熱海殺人事件』の熊田留吉を相手にした木村伝兵衛の台詞の一節をやってみせてくれた。さすが『大銀座落語祭』で芝居『熱海殺人事件』の伝兵衛役をやっただけのことはある。 噺は『心眼』。『熱海殺人事件』を聴いた直後のせいか、今日の『心眼』はやけに演劇よ寄りに聴こえた。茅場町の薬師にお参りするところは独り芝居のよう。 夢から覚めたときに、お竹に「怖いよ、怖いよ」と子供のようになって縋り付くところは圧巻。目が明いて梅喜の高慢な部分が出た後だけあって、これは劇的だ。 奈々福はこれを聞いて、ネタを変えてきた。『仙台の鬼夫婦』。『心眼』の夫婦の情を見せられてしまってはねこれに対抗するにはこのネタしかなかったのだろう。 3月16日記 静かなお喋り 3月15日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |