ラッパ屋 おじクロ 2012年11月9日 新宿・紀伊国屋ホール 作・演出の鈴木聡が、ももいろクローバーZが好きになった事から生まれた芝居。 おそらく、鈴木聡はラストで中年のおじさんたち五人が、ももクロの曲をバックに振り付け通りに踊るという場面をやりたかったのだろう。その一点のためにストーリーを作っていったんじゃないかと思う。倒産の危機にある下町の中小企業の町工場。その社長、副社長とその家族。従業員。出入りの業者。そんな人たちが集まっての話だが、ストーリーにあまり流れが無い。 大企業の下請けで部品を作っているのだが、不景気で受注も減り会社更生法の申請も考えられる工場の経営者。不安がる従業員。経営者の娘の結婚話。後継問題。なんだか深刻な話題ばかりなのだが、カラッとした喜劇仕立てなので、あまり暗くはならない。でもそれで済んでいるのは芝居の世界だけだよなぁと思えてくる。 なんだか淀んだ芝居が続く中で、この芝居の何人かの登場人物のおじさんたちが、ももクロに夢中になっているというのが、この芝居の肝。彼らは、ももクロの五人はまだ十代の女の子なのに、学校に通いながら激しいダンスを踊り、いつも笑顔だという事に感動している。その一生懸命さに魅かれて、自分たちも頑張ろうとしている。 でもさぁ。それがなんで五十代のおっさんたちが、ももクロの踊りをコピーして踊るところを、人に見せようなんていう展開になるのか、私には正直わからない。 ももクロは、You Tubeで観たことはある。確かに激しい踊りをこなすし、カワイイとは思うが、こういうの好きか嫌いかと言われれば、好きでも嫌いでもないから、好きな人たちだけで勝手にやってればという気持ちしか湧いてこない。要するに、私にとっては、どうでもいいのよ。 だからラストで、ももクロを踊るところは、私を含めて観ている人によって温度差がはっきり出てしまうのだと思う。ステレオタイプみたいな話を1時間40分も見せられたあとに、これじゃあ、身の置き場に困ってしまう。 ももクロに乗れた人には、いい気持ちの芝居だったろうし、私みたいに乗れなかった者には、「困ったね」としかいいようがないのだね、これは。音楽って好き嫌いの世界でもあるんだからね。 11月10日記 静かなお喋り 11月9日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |