直線上に配置

客席放浪記

おのれナポレオン

2013年5月2日
東京芸術劇場プレイホール

 このところ、どうも三谷幸喜の芝居を観に行くという事に積極的になれなくて、何本も見送っていた。なにしろこのところ一年に何本も上演されるし、ほとんどWOWOWで放送されるしという安心感があったからだろう。それでも、この『おのれナポレオン』は野田秀樹主演で、彼に当ててナポレオンを持ってきたというアイデアを聞いただけで観たくなった。

 その予感は当たっていた。野田秀樹扮するナポレオンは、芝居が始まって20分くらいしたところで登場するが、まさに思った通りのナポレオンとして目の前に現れる。背が低くて小柄で、声はやたら甲高く、威厳のあるナポレオンとは程遠いのだが、このスタッフ・キャストなら、さぞやこういうナポレオンになるであろうというイメージぴったり。

 とにかく野田秀樹の演じるキャラクターが強烈なので、ナポレオンが出てこない場面では、いささかおとなしい芝居になってしまうほど。野田秀樹以外では何といっても天海祐希がよかったなぁ。途中、ピアノでベートーベンの『月光』を弾く場面があるのだが、ちゃんと弾いてる。ピアノの素養がある人なのかもしれないが、これは相当練習したんだろうし緊張するだろう。失敗は許されないし。それでいて、「(この曲は)同じ繰り返しでつまらない」なんて言われる台詞がある。これには客席から笑いが。そうだよなぁ。『月光』って案外退屈な曲で、もっと変化していかないかなぁと、じれったくなるもの。

 噺はタイトル通りと言えるかもしれない。ナポレオンの死の謎を巡る歴史ミステリーのような構成。途中のチェスの場面が、のちのちの伏線になっていたり、脚本はちゃんと計算されている。一応ミステリの形を取っているから詳しいことは書けない。最後にきて驚かされる結末もあり、さすが三谷幸喜だなと思う。最後の台詞も「決まった!」という感じで終わるし、これだけ芝居を量産していてもレベルが落ちないのは、やっぱり才能がある人なんだろう。

 客席にせり出した形の舞台は、観やすくていい。後ろの方の席でも問題なく観られるし、これなら金額に見合うなと思う。このプレイホールは以前はやたら観難い席があったが、これなら納得。

 一ヶ月以上の公演期間も、もう千秋楽が見えてきて、どうやらアドリブらしい台詞もみられた。もう一度くらい観たいなと思ったら、後ろの席の人が、「これで三回目だ」と言うのが聞こえてきた。そういえば、かつて私も『オケピ!』を東京、名古屋、大阪と追いかけて観て、さらに再上演でも観たことがあったっけ。

5月3日記

静かなお喋り 5月2日

静かなお喋り

このコーナーの表紙に戻る

トップ アイコンふりだしに戻る
直線上に配置