2012年6月7日 鯉昇・塩鯛 東西お魚ふたり会(日本橋劇場) 開口一番前座さんは、瀧川鯉ちゃで『熊の皮』。この人、初めて観たかも知れない。37歳で入門したとあって、落ち着いているし、噺もしっかりしている。『熊の皮』なんていう噺は、ある程度歳がいっていないと、こういう味わいは出にくい。頑張ってね。 瀧川鯉昇一席目は『千早ふる』。在原業平の歌の意味を聞きに来た男に、しったかぶりの隠居さんがいい加減な解釈を教える噺だが、土足で入って来た男にぞうきんがけをさせるくだりが入っていて可笑しい。このへんがいかにも鯉昇落語。 竜田川はモンゴル出身力士で、引退後、モンゴルの草原で豆腐屋をやっているというのも可笑しいなあ。そこに花魁がやってくるって、もうむちゃくちゃじゃん。あはははははは。 サゲもオリジナル。こういうとぼけたサゲがいかにも柳昇ゆずり。 桂塩鯛はいつもマクラがバツグンに面白い。一席目は最新の洗濯機を取り上げていたが、その観察力、表現の面白さに引き込まれてしまう。 ネタは『壺算』。上方落語の場合、東京でやっているサゲのあとに、「それがこっちの思うツボやがな」という台詞が入る。これを入れないのが東京風のスッキリしたところでもあり、ここにダメ押しを入れるのが上方風。どちらかがいいかは、うーん、好みだね。 そういうところが上方のキッチリとしたところかも知れない。桂塩鯛は二席目に入るマクラで、上方落語の方が細部がキッチリしていると解説が始まる。 「『長屋の花見』は上方では『貧乏花見』。大家さんは出てきません。貧乏大家さんが長屋の住人を連れて花見に行くなんて、あり得ないでしょ? 『貧乏長屋』では、朝から雨が降っている。それが途中で上がる。すると仕事にあぶれた長屋の住人が集まってきて花見にでも行こうかとなる。理に適っているでしょ?」 「東京の『そば清』は、『そばが羽織を着て座っていた』でサゲる。それじゃあ、着物や襦袢はどうしたの?と思いません? そこへいくと上方の『蛇含草』は、『餅が甚平を着て座っていた』。どうです。だから夏という設定なんですよ」 「もっともその事を楽屋で鯉昇さんに話したら、『そんなのどうでもいいじゃない』と言ってましたが」 そのせいか、『牛ほめ』も東京で演じられているものより、家の褒め方が細かい。へへえーっと聞き込んでしまった。こりゃあ噺を憶えるのは大変そうだ。東京では前座噺でもあるし。 トリは瀧川鯉昇『船徳』。竿を流してしまった若旦那、櫓に変えるが、櫓の漕ぎ方もうろ覚え。他の船の様子を見ながら漕ぐ始末。「ええっと、ああやって、こうやって・・・うん、こうか」 いやだねえ、こういう船。 この噺のサゲも鯉昇は変えている。このサゲもいかにも鯉昇らしい。途中でサゲに繋がる前振りがあったのだが、なるほどこのサゲに繋げたかったんだ。 6月8日記 静かなお喋り 6月8日 このコーナーの表紙に戻る |