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客席放浪記

おとこたち(ハイバイ)

2014年7月12日
東京芸術劇場 シアターイースト

 ハイバイを観に行くのは、確か5年ほど前の『て』以来だと思う。

 今回も、携帯電話などの注意事項などのマエセツを楽しく聞かせながら、いつの間にか自然に芝居に入って行った。

 これは4人の男たちの、24歳から82歳までの物語。おそらく幼なじみだと思われる男たちの物語が、なぜ24歳からなんだというと、やはり社会人になった男たちの姿を描きたかったのだろう。学生時代までって、勉強のできるやつとか、できないやつとかいても、結局はまだ社会人としてスタートしていないんだよね。人間の運命が大きく変わって行ってしまうのは、やはり学校を卒業してから。

 芝居は、4人の男を登場させることによって、男の人生で起こる様々なパターンを舞台の上に並べてみせる。会社員として順調に生きていく者。怪しげな企業に就職した者。役者になった者。結婚した者。独身のままの者。浮気をしている者。風俗にはまっている者。早死にした者。子供の無気力に悩んでいる者。子供に暴力を振るった者。定年退職したものの家族から疎んじられている者。気が付けば80歳を越えていて認知症になった者。

 台詞の中で、「若い頃は、60歳も80歳も区別がつかなかった」というのがあるが、ほんと、私くらいのトシになると、すべてが見えてくる。もう最後がなんとなく見えてきて、人間の一生というもの全体がわかってしまった気になってくる。

 不思議なもので、私くらいの年齢になってからの同窓会って面白い。学生時代に頭が良かったやつが、必ず成功しているとは限らないし、幸せになったとも限らない。

 私たちは、小学校に入ったころから、学校という中で競争心を煽られていく。勉強して、いい会社に就職して、いい女性と結婚して、いい家庭を持つ。それが人生最大の幸せだと。勉強は競争。運動も競争。勝つ者が一番。しかし、人生もそろそろ先がわかってしまって来た時、世の中、勝ち負けじゃないんだなって気が付く。人生っていろんなことが起こる。一概に勝った負けただけじゃないんだってことがわかってくる。その中で、男って、このちっぽけな地球の上で、ドタバタ生きて、そして死んでいくんだよな。

 劇団名のハイバイとは、一説によると、この世にハイと生まれてからバイバイするまでのことだと聞いたことがある。まさに劇団名に相応しい芝居でしたね。

7月13日記

静かなお喋り 7月12日

静かなお喋り

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