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客席放浪記

ペペ祭り

2016年10月6日
日本橋劇場

 昨年の暮に心筋梗塞で倒れ、二か月間の入院生活をしたギター漫談のペペ桜井。4月には仕事に復帰して、また元気な姿を見せてくれている。そのペペさんも80歳。今月10日には81歳を迎えるということで、ペペさんを慕う若手が集まって開いた、ペペ桜井生誕80周年祭。人気者がズラリ揃ったこともあって、チケットは完売だそうだ。

 まずはペペ桜井以外の出演者による挨拶。この会の企画を立ち上げて構成を担当したのは、お囃子の恩田えり。いつもの不思議な調子の喋り方ではない上に、私服姿で、「えっ? 誰?」。メンバーは当日になってこんなコーナーがあることを知らされたそうで、なんともゆるゆるした時間。こういうの、いいね。

 ロケット団の漫才。いつもの寄席で演っているようなものとはちょっと変えている感じ。リオ五輪を題材にして、それが少しずつ最近の別の出来事にずれていくというパターンをいくつも出していた。うまいね、この人たちは。後半はタイミングのネタ。

 春風亭一之輔は、持ち時間があまりないとかで、すぐに『新聞記事』へ。新聞記事の小噺を聞かされて、自分もやってみようとする男が、一之輔にかかると、もう桁違いなバカな男になる。こういうバカキャラは、十八番の『鈴ヶ森』のキャラクターにも共通する。このパターンを見つけた一之輔は凄い。

 林家二楽の紙切り。いつもの鋏試しの桃太郎、今日はお供の犬がギターを持っている。切りながらいつも言っている話をしても笑いが来ないので、これはただの演芸好きのお客さんじゃないなと察して、゜お題が怖い」と言っていたが、声がかかったお題は、「弁慶」「隠れキリシタン」「ペペ桜井」。「弁慶」というオーソドックスなお題にホッとしたようで、スラスラと切り抜く。一方で「隠れキリシタン」はどうするのかと思ったら、また弁慶を切って、その足元に踏み絵。うまく逃げられた〜。でも弁慶ってキリシタンだったの? 「ペペ桜井」は、「そんなお題がでると思って、楽屋で切ってきました」。二楽の方が上。

 柳家喬太郎は、「見ればお分かりだと思いますが、私、スポーツは観るのもするのも興味ありません」。リオ五輪のときに、オリンピックには興味がないと言うと非国民扱いされたと不満を漏らして『鸚鵡の徳利』。自分の趣味でもある落語。それを形態模写で遊ぶ噺。さん喬、円丈、馬風、雲助ら。知っている人は大爆笑。知らない人はまったくわからないだろう。これは今日の会を仕切った恩田えりにも活躍の舞台をあげようという喬太郎の心配りなんだろうな。

 仲入り後に寸劇『帰って来たペペ物語』。ペペさんと愛用のギターのお話。喬太郎のバーのママ姿が・・・!

 いよいよペペ桜井の出番。定番のネタを20分。私は病気後のペペさんを初めて観たけれど、とにかく早口な人なのは以前と同じ。ただちょっと言葉が聞き取りにくくなったかなという感じ。ギターの腕も落ちてないが、左手の抑えが若干弱くなった気がする。でも80歳にしては元気。いつもにも増して大きな拍手を貰っていた。

 最後は座談。ペペさんのステージ衣装や、昔のエピソード。ペペ桜井という芸名の由来など。もともとは小田切トシカズという名前で出ていたのが、日劇に出た時に勝手にペペ桜井という名前にされてしまい、以来、この名前になったそうだ。恩田えりはみんなからからかわれて、今度から恩田切えりに改名したらどうかと言われてた。

 今、ギター漫談ってやる人は絶滅危惧種になってきてしまった。ペペさん、これからも元気な姿を寄席で見せてね。

10月7日記

静かなお喋り 10月6日

静かなお喋り

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