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客席放浪記

ぴっかり☆春一番

2015年4月2日
日比谷コンベンションホール

 春風亭ぴっかりは、前座時代の春風亭ぽっぽのときから人気があった。女流落語家としては、ダントツでカワイイのと、明るくて華のある高座が注目を集めていた。二ツ目昇進して3年。落語協会会員であると共に、芸能プロダクション・東宝芸能に所属し、これから新たな展開をしていこうという出発点の落語会。師匠の春風亭小朝と同じように、俳優や、バラエティのタレントとして活躍したいと計画しているのだろう。

 日比谷コンベンションホールは、日比谷図書館の地下にある施設。座席数役200。落語会をやるには、なかなかよさそうな設備。座ってみると、座席の配置もよく考えられていて、観やすい設計になっていた。ぴっかり☆というと圧倒的に男性客ばかりだろうと思っていたら、けっこう女性客の数も多い。開演前は、松田聖子やらキャンディーズやらの昭和アイドル歌謡が流されている。高齢の落語好きの皆さん向けに、ぴっかり☆は、そういう扱われ方なのだろうか?

 開口一番、前座さんは林家なな子。来月、二ツ目昇進だそうだ。噺は『寿限無』。前座修業もあと少し。頑張ってね。

 「落語界のポスト宮崎葵、春風亭ぴっかり☆です」との第一声で拍手が沸く。師匠の小朝が『篤姫』に出演し、ぴっかり☆もロケ現場に手伝いに行ったそうだ。「ロケ先で、どうもスタッフと間違えられて、さかんに『宮崎さんに渡してください』と手紙や贈りものを手渡されたことがありまして・・・ポスト宮崎葵」
 一席目は『桃太郎』だが、かなりいじっていて改作に近くなっている。自分では『ピーチボーイ』と呼んでいるとの事。なるほど、『桃太郎』の噺を聞かされる子供は、オリジナルとはかなりかけ離れている。オリジナルでは、父親が『桃太郎』の噺を子供にし始めると、子供から質問攻めにあい、一通り話し終ると今度は子供からこの噺の裏の意味について教えられるという内容。ぴっかり☆は、そこをもう一つ踏み込んでみせた。学校に塾にと忙しい生活を送る息子は、一日の頭の働きをクールダウンしてから寝たいのに、父親から矛盾だらけのお伽噺を聞かされて機嫌が悪い。おじいさんは山に柴刈り、おばあさんは川に洗濯って、環境破壊だと言いだす。「正しくは、おじいさんは山に植林、おばあさんは川に鮭の稚魚を放流に行きました」。鬼ヶ島の鬼というのも、果たして本当に悪い鬼だったのだろうか? 桃太郎はきっと鬼ヶ島の鬼が平和に暮らしていたのを、鬼ヶ島の利権を横取りしにいったのではないかと勘ぐる。ハハハハハ、そうかもしれないよなぁ。

 落語の後は、立ち上がって、踊り『松づくし』。若いから、こういう曲芸張りの踊りも安定してるね。

 仲入り後、春風亭ぴっかり☆は、前に釈台を置いた。25歳で小朝の門を叩き、前座修業。5年の前座生活の後二ツ目昇進して3年。女性として一番輝いている時期を、化粧も禁じられ、ひたすら落語に取り組んで過ごしてしまった。おかげで、同年代の仲間は次々と結婚し、子供を産み、人に自慢の生活をしていて、自分だけ取り残されてしまったような気になる事があるといった、笑いを交えたカミングアウトのマクラから、新作落語『所沢パラダイス』。所沢の女性バーテンダーのいるバーにやってきた女性が、いろいろとグチをこぼすといった内容の噺。ぴっかり☆に言わせると、これはアラサー女の気持ちを語った新作落語だそうだ。ははあ、これはひょっとすると師匠小朝も演っている『ぼやき酒屋』がヒントになったのかもしれないな。どうも釈台はバーのカウンターという演出なのかもしれない。

 これも終わってから立ち上がって、南京玉すだれ。ただし、ぴっかり☆のは、『かっぽれ』を踊りながらという、『かっぽれ玉すだれ』。

 お色直し(?)の間に、林家なな子が、もう一席。林家の定番『みそ豆』

 春風亭ぴっかり☆の三席目、改作、新作と来て最後は、古典で締めくくった。『湯屋番』。う〜ん、女性の口で男の妄想を語る姿を見るというのは、最初、ちょっと引きましたな。アハハハハ。なんか日本エレテル連合を観る感じとでもいいますか・・・。それでも慣れてくると、妄想の中で登場する女性がさすがに色っぽかったりして、これはこれで結構なものでした。

 ひょっとして終演後に握手会でもあったりして・・・と思ったら、握手会というわけでもないけれど、出口にぴっかり☆が立って挨拶しておりました。握手を求めればしてくれたかも。アハハハハ。

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