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客席放浪記

ぴっかり☆夏祭り

2015年8月23日
日比谷コンベンションホール

 開演前、『夏のお嬢さん』や『いまの君はピカピカに光って』が流れている。これは四月の『ぴっかり☆春一番』のときと同様。昭和アイドル歌謡路線で、ぴっかり☆を売り出そうとしているんだなぁ。つまりお客さんの対象は、今、50歳以上になっているおっさんってことか。

 『ぴっかり☆春一番』のときの開口一番は林家なな子だったが、なな子は五月に二ツ目に昇進。今日は、林家あんこ。女性の落語家もどんどん増えている。この会は、ずっと前座に女性を使っていくつもりなのかも。『たぬ札』。前座修業、頑張ってね。

 春風亭ぴっかり☆一席目は、コンビニスイーツのマクラのあとに『蛇含草』。「餅、好きなのかい?」「ええ、先祖が望月だったそうで」とかましてから、餅食い。最初は噛まずに餅の丸飲み。蛇含草にひっかけて丸飲みを入れたのかもしれないが、いい年したおっさんは真似しないように。喉詰まらせて死ぬよ。餅を全部食べると豪語する男と、食べられるものなら食べてみろという男の、意地の張り合いといった嫌な部分をソフトにスルーした『蛇含草』に変えてあった。それがぴっかり☆の落語なんだな。

 二席目。開口一番で出た林家あんこは、林家時蔵の娘だというマクラから。二世落語家初の女性なんだそうだ。二世から若旦那に繋げて『たちきり』。はたして女性がこの噺を演るってどうなんだろうと思って聴き始めたのだが、案外いけるのに気が付いた。むしろガサツなイメージの男の落語家よりいけるんじゃないか。優男の若旦那、若旦那の知らぬうちに死んでいく芸者の悲しみが、女性が演るとしみじみと伝わってくるではないか。これは拾い物だったなぁ。

 仲入り後は、ぴっかり☆の南京玉すだれから。お魚を作ったあと、すだれが戻らなくなり、すかさずもうひとつすだれを出してくるという準備周到さ。アハハハハ。

 林家あずみの三味線漫談。あら、先ほど『たちきり』で流れてきた三味線は、この人だったのか。この人を観るのは、私は四年ぶりか。話がずいぶん上手くなったという印象。京都出身だというのは以前聴いたが、東京に出てきた当初、京都弁を話していたそうで、それがどうも周りから「京都弁で男の気を引こうとしている」と言われて標準語に直したと話す。ウフフフフ、女同士の世界って面白い。男は女の気を引こうとしている男がいても、絶対にやっかんだりしない。『新土佐節』『淡海節』『祇園小唄』『和藤内』『淡海節』『芝で生まれて』『東雲節』『おてもやん』と、気のせいかちょっとテンポを落とした感じで弾いて歌う。これが京おんななんですかねぇ。歌も話もとても聴きやすいし面白い。やはり男の気を引く京おんななのかも。こりゃ、男は簡単にたらしこまれてしまいそう。

 ぴっかり☆三席目は『悋気の独楽』。お妾さんのところに出かける旦那が寄席に行ってくるという口実を言うのが定番だが、女のぴっかり☆が演るとちょっと変わってくる。「どちらにお出かけです?」「落語でも聴きに行こうと思ってな。日比谷コンベンションホールで春風亭小朝が出ているんでな」「どうせおしろい塗った落語家が出て来るんでしょ」「小朝がおしろい塗ってたら気持ち悪いよ。いい着物を出しておくれ」「寝間着でいいじゃないですか。どうせすぐ脱ぐんでしょ」「小朝と寝るわけないじゃないか」。アハハハハ。あとから出てくるお妾さんが実にカワイイ。こういう女性にあったら男は確かに、たらしこまれるね。

 出演者、若い女三人の会。私もすっかりたぶらかされた気になってしまった。

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