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客席放浪記

西新宿ぶら〜り寄席 瀧川鯉朝独演会

2013年3月28日
ミュージックテイト西新宿店

 瀧川鯉朝ひとりで古典落語二席、一時間半。この人、マクラで私事(わたくしごと)を話させたらいくらでも喋れる人で、しかもそれがまた面白い上に、何でも喋っちゃう。マクラで部分だけで一席分ありそう。

 最近、弟子を取ったそうで、「へえー、鯉朝さんに弟子が」という思いがした。いや、真打だし実力もあるし、人柄もいいし、弟子がいない方がおかしいくらいだが、なんだか今まで鯉朝さんに弟子というイメージが浮かばなかった。この弟子の話が面白いのなんの。結局お弟子さん、見習い修行では抜群の才能を発揮したものの、前座として楽屋入りしたら、心折れてしまったらしく脱落。いなくなってしまったそうな。こういうことを面白おかしく喋る才能は抜群の人だね。弟子と師匠の関係もいろいろあるが、破門ではなくて、弟子の方から去って行ってしまった、鯉朝さん曰く「逃げられた」というのは珍しいのかなぁ。一応とりあえずは休業という形らしいが、これからの続きがありそう。
 というわけで長いマクラの後に『しわい屋』。ケチな人の噺だがこの人にかかる自由な発想の古典落語に変わる。一番お金がかからなくて楽なのは寝転がっていることだと、高座の上で本当に上向きに寝転んでしまった。「(寝転んだままで)こういうことをやるから、色物落語家って言われるんだよなぁ・・・可能性の追求って言ってほしいんだけど。それに今日は高座が小さくて寝ずらい。上下もきらなくちゃいけないし。やりにくい」

 着物が乱れてしまったとかで5分間の仲入り休憩。

 二席目は『祇園祭』。京都人と江戸っ子の自慢合戦が楽しい噺。お国自慢はいいけれど、余所の国の悪口を言ってはいけないって事。落語って為になるなぁ。この噺のマクラには弟弟子から、噺を教えてくれと言われたというエピソードが着いた。「普通、どういう噺を教えてくれと言ってくるでしょ。それが条件出してくるんですよ。長い噺は嫌だ。歌が入るのはだめ。長い言い立てが入るのもだめって」 凄い弟弟子だが、さしずめこの『祇園祭』あたりも、無理かも。長い言い立てはあるし、方言はあるし、祭囃子のエアー囃子はあるし。鯉朝さんも、相当稽古したらしい。

 いつも、この文章を書くときは、高座名を呼び捨てにしているが、この人だけはどうしても、鯉朝さんと書いてしまう。なんだかそう書きたくなる親密感が、この人にはある。

3月29日記

静かなお喋り 3月29日

静かなお喋り

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