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客席放浪記

2012年6月17日 瀧川鯉橋真打昇進披露公演(池袋演芸場)

 開口一番前座さんは、瀧川鯉ちゃ『寄合酒』。先日もこの人を見たけれど、歳がいっていることもあるけれど前座とは思えないくらい落ち着いている。期待が持てる前座さんだ。

 笑福亭羽光は新作落語『あるある帝国』。ロールプレイングゲーム仕立てになっている、あるあるネタ噺。あるある帝国の使者と闘い、お姫様を助ける噺。「バターを塗ったトーストを床に落とすと、必ず塗った面を下にして落ちる」「メールのタイトルの場所に本文を書いてしまう」「メールを打っていると、相手から電話がかかってきてしまう」 現代っ子の作る噺だねえ、アハハハハハ。

 ぴろきは出てきた途端に手に持った楽器ギタレレのチューニングを始めてしまう。ギタレレはギターとウクレレの中間みたいな楽器。この人以外で聴いた事が無いのはどうしてだろう? 「チューニング・メーターがないと出来ないんですよねえ」と言うぴろきに、客席から「持ってるよー」の声。「何で持ってるのー?」 ようやくチューニングを終えて、お馴染みの自虐ネタに入ったが、終わって「出番が終わるころになって、ようやくチューニングがよくなりました」っていうのが一番受けてた。フハハハハハ。

 「新真打を観に来て、訳のわからない噺家が出てきて、訳のわからない噺をしているとお思いでしょうが・・・」と三笑亭夢花。本来は鯉橋のアニさんに当たる鯉朝が出る位置なのだが、今日は代演。それでも『替り目』でしっかり笑いを取っていた。

 「新真打の鯉橋、里光はどちらも日大文理学部出身ですが、私は農大出身。落研での名前は、肥家二毛作」 春風亭柳好『悋気の独楽』

 Wモアモアの漫才。「人間、いつまで生きるか決まってないからね。70歳までとか決まっていれば、それまでにいくら使っていいわかるんだよね。なにしろ、あの世にお金持って行かれないからね。80まで生きるつもりが85まで生きてしまってみなよ、地獄だよ」 こういうの最近よくわかるんだ。私もいつも計算ばかりしているもんねえ。

 瀧川鯉昇『ちりとてちん』。「ひと月前の湯豆腐の残りが鍋に入れたままになってる? 持って来なさい・・・豆腐ってのはひと月経つと毛が生えるのかねぇ。うらやましい」

 三笑亭笑三『てれすこ』。地噺だから、自由に語る脱線話が楽しい。笑三も寿命とお金の話をしている。「死んで持って行かれるわけじゃないでしょ。恵まれない落語家に御祝儀を・・・」

 仲入り後は、真打昇進披露口上。新真打の、鯉橋、里光を中心に、両脇に鯉昇、鶴光が付き、上手に笑三、下手に司会の柳好という並び。

鯉昇「お客様からご祝儀を貰うよりは、お小言を貰った方がいい・・・というのは、私の師匠、柳昇の言葉ですが・・・私はそうは思いません」

鶴光「鯉昇さんはウソばかりつく人です。瀧川クリステルは自分の弟子だと言ってました」

笑三「口上なんて短い方がいいんです。祝(縮)辞と言いまして。長いと弔(長)辞になってしまう」 うまい!

 笑福亭里光は上方噺の『軽業』。お囃子の、はめものが入り賑やかな一席。

 里光の熱演のあとは、笑福亭鶴光が軽く『生徒の作文』で笑いを取る。

 ヒザは北見マキのマジック。コヨリ抜けを鮮やかに決め、ティッシュを使ったマジックの種明かし。言うは安し、やるは難し。素人が簡単に出来るものじゃないんだけどね。

 待ってました! 瀧川鯉橋師匠、ちょっと緊張ぎみかな。マクラもそこそこにして『片棒』に入る。ケチな親父さんの葬式を出すのに、長男は豪勢な葬式を提案する。「それで、何人くらい呼ぶつもりだね?」 「そうですねえ、ざっと3000人」 「バカ言っちゃいけない。寄席なんて100人集めるのもたいへんだ」 鯉橋師匠、尻上がりに調子がよくなっていった。これからも尻上がりにいい噺家になっていって、3000人くらい、あっという間に集まるようになってね。

6月22日記

静かなお喋り 6月17日

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