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客席放浪記

露骨中の露骨

2013年8月4日
東京芸術劇場プレイホール

 2時間でコント7本と、それを繋ぐビデオ上映。7本のコントは以下のようなタイトが付けられているらしい。

『最終日』
『気遣い』
『めんどくさい親友』
『市民の味方』
『アニバーサリーウォッシュ』
『魔が差して』
『帰省にて』


 世の中には、言いたくなる気持ちもわかるが、口にして言ってしまってはいけない事が、いろいろある。
 『最終日』というのは、ハワイ旅行にやってきた三人の男。その最終日、中のひとりが体調を崩して寝込んでしまう。しかし仲間のひとりは、せっかくハワイまで来たのだから、最後の日もパラセイリングでもして、とことん遊びたいと思う。しかし残るひとりは病気の友人をそのままにして遊びには行けないので、病人は自分が見ているからひとりで遊びに行って来いと言う。かといって、言われた方としても、ひとりで遊びに行ったんじゃ面白くない。この場合、普通どうするか。遊びたいと思うひとりも、それならと最後の日くらいホテルでみんなと一緒にのんびり過ごそうと言いだすだろう。それが仲間というもの。ところがこの男、露骨に「遊びたい」と口にする。まあそれは本音なのだろうが、それを口にしてしまうと、あとのふたりは困ることになる。看病を買って出た男は、病気の男をそのままには出来ない。かといって、ひとりで遊ぶのはつまらないと言いだす男を無視するわけにもいかない。とすると、どういうことになるか。病気になった男は「もう大丈夫だから」と無理をして起きだしてくる。気遣いをしたのは、病気になった男と看病を買って出た男。気遣いなく本心を口に出してしまったのは遊びたかった男ということになる。

 その気遣いというテーマは、次のコントのタイトルにもなる。出張に行ったふたりが留守番をした上司の元に挨拶にくる。ひとりは手土産を持ってくるが、もうひとりは持って来ない。これは今回に限った事ではないらしく、常にそういう関係にあるらしい。気遣いをする人としない人。ついに上司が、この気遣いをしない方の部下にキレてしまう。「お前は、オレのために何かしてくれた事があるのか!」。これは上司の気持ちもわかるが、口にしてはいけない事。この一言を発してしまったばっかりに、この上司は自分でも自分が嫌な奴になってしまった事に気が付いて愕然となってしまうと同時に、上司に気を使っていた男も、自分が気を使いすぎていた嫌な男みたいになってしまう。

 ほかに、「もうお前たちの前には二度と姿を現さない」とキレてしまった男が、その言葉のためにたいへんなことになるのが『めんどくさい友人』。浮気の現場を押さえたつもり夫が証拠のつもりで口にした一言から立場が悪くなっていってしまう『魔が差して』。すべて人間関係って難しいなと思わされるコントばかり。コントにしては、笑っただけでは終わらない深さがあった。

8月5日記

静かなお喋り 8月4日

静かなお喋り

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