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客席放浪記

ラフカット2014 20周年スペシャル

2014年6月15日
全労済ホール/スペース・ゼロ

 無名の役者に活躍の機会を与えようという趣旨で行われている『ラフカット』も、20周年を迎えた。今回は、過去に上演されて好評だったものの中から4編を選んでの上演。出演者は今回も、ほとんど無名の新人ばかり。この役もっとベテランの役者が演じたら、もっと面白くなるだろうにと思うところもたくさんあったが、とにかく一流の脚本家が書いたものだし、その傑作選の意味合いもあり、短めで面白い芝居が4本楽しめるというのは、かなりなお得感。

『アンデスの混乱』(脚本/鴻上尚史)
 アンデス山脈に旅客機が不時着して、人肉を食べて生き延びた実話。あれを乗客が全員日本人だったらという設定で書かれた台本。不時着した旅客機に乗っていたのはパイロットも含めて20人。そのうち生き残ったのは11名。亡くなった人たちの遺体は白いシーツで包まれ外に置かれている。助けが来ないまま、ついに食糧が無くなる。生き残った11人の日本人は、死体の肉を食べて生き残るか、このまま死を待つかの選択を迫られる。みんなで話し合いで決めようという事になるが、中の一人、帰国子女の女性には日本人のやっていることが理解できない。話し合いをしようとしても誰も意見を進んで言いたがらない。人の顔色ばかりを見ている。そして話し合いもしないで多数決で決めようとする。人肉を食べようという事になれば、誰が最初に食べるかに責任のなすりつけ合い。最終的にジャンケンで決めるということに、そんな偶然の方法を持ち出すなんてと帰国子女には理解できない。やがて、救助隊が彼らを発見。そのときに彼らのとった行動とは。日本人論をブラックユーモアの形で提示する。今回の4編の中では一番長く、50分くらいあった。

『13000/2』(脚本/ケラリーノ・サンドロビッチ)
 イメクラ風俗店の待合ロビーを舞台に、イメクラ嬢、客、店員の人間関係泥沼のドタバタ劇。風俗嬢役なんて、新人女優さんなんかには抵抗ありそうだけど、みんな全力で役に取り組んでいる。こんなことで恥ずかしいなんて言ってたら、役者なんてやってらんないんだろうけど。

『洞海湾』(脚本/松尾スズキ)
 これは凄い。北九州のスナックを舞台にした、ヤクザとスナック店員と、ヤクザがシノギにしている麻薬を横流しにしたやつの話。松尾スズキ世界が30分の中に凝縮されて詰まっている。毒気に当てられっぱなしだった。

『紅葉狩り』(脚本/堤泰之)
 入院棟の3人部屋での人間模様。今回の4本の中では一番大人しい芝居。下手側のベッドの男は1週間ほどの入院だが、見舞客の女性と奥さんが鉢合わせしてギクシャクし始めている。上手側のベッドの男は検査入院という形だが、どうやら自分は癌なんじゃないかと思い始めているところに、会社の人間がやってきて解雇を告げられる。そして、なかなか出てこない真ん中の男は・・・。しんみりとするラストで終わる。この芝居が一番地味だが、ラストの余韻がいい。

6月15日記

静かなお喋り 6月14日

静かなお喋り

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