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客席放浪記

両極端の会VOL8

2014年7月23日
紀伊國屋ホール

 前回(昨年12月)、柳家三三から三遊亭白鳥に出された宿題は、「夏だから『怪談牡丹燈籠』を」だったとのこと。オープニングトークでは、白鳥が「『牡丹燈籠』の噺って、おぼろげにしか知らなかった」と打ち明け、三三に「あなたは円朝の直系でしょ」と突っ込まれ、「ぼくは、そういうこと知らないで入ったから」と、相変わらずの天然ぶり。「『牡丹燈籠』、図書館で借りてきて読みましたが・・・」「買いなさいよ!」

 といったような爆笑オープニングトークのあとに、柳家三三が高座に上がって、マクラも何もなくいきなり『豊志賀の死』に入ったら、笑いが起こり、三三も、この笑いに意外そうな顔をしていたけれど、あのトークのすぐあとだから、軽くマクラを入れるくらいした方がよかったかも。この会で以前、白鳥が『豊志賀ちゃん』を演ったことをマクラにしてもよかったんだし。
 39歳、男嫌いだったはずの豊志賀が若い新吉にいたずら心で誘いをかけて、逆に夢中になってしまうところ、リアルな描写は排してあるがエロチックだよなぁ。それと新吉とお久が寿司屋の二階の四畳半で会うところも妙にエロチック。円朝の怪談に共通するのは、どれもエロチックだということ。それに恐怖が絡んでくる。人間の心の奥底って、結局そういうものなのかも知れないと、つくづく思う。

 さて、三遊亭白鳥版『牡丹燈籠』だが、白鳥はこの日に向けて、すでに、ヨチヨチSWANでネタおろしは済ませており、さらにはピンクの白鳥で、そのエロチックアレンジもやっていて、私はどちらも観に行っている。白鳥としては、まさに準備万端だったろう。演目は終演後『牡丹の怪』と発表された。ネタおろし及びエロチック版では、主人公はQ蔵だったところを、『豊志賀ちゃん』と同じく、柳家ミミにしていた。お露さんのお屋敷に連れて行くのは、アサダ二世から柳家喜多八へ変更。ネタおろしのときとそれほど変わっていないが、細かい変更はあったようでスッキリとして聴きやすくなった印象。エロチック版で使ったものも一部入れていたが、白鳥が演ると実に健康的なエロスになっていて、いやらしさはまったくといって無い。そこに笑いの要素をガンガン盛り込み、それでいてロマンチックなラストに落とし込む技は感心するしかない。いいなぁと思ったところで、例のあのサゲ。一瞬にして笑いに包まれる。ほとんどのお客さんが、ネタおろしのときも、エロチックアレンジの時も来なかったろうから、大爆笑を取っていた。

 この調子で行くと、三三は白鳥に、どんどん円朝作品をやらせる方向に行くんではないだろうか。白鳥が円朝を継ぐなんていうのも、あながち無くもないのでは。そんな気がしてきた。

7月24日記

静かなお喋り 7月23日

静かなお喋り

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