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客席放浪記

サナギネ(成体サイド)

2014年11月9日
青山円形劇場

 青山円形劇場が閉館することが決まった。双数姉妹という劇団が三回に渡って上演したという『サナギネ』というお芝居は、この青山円形劇場という場所でしかできない構成をしているもので、それをベット&メイキングスが再演するというもの。

 まずチケットを買う段階で、購入者は『幼生サイド』で観るか、『成体サイド』で観るかを選ばなくてはならない。この芝居のことを知らないと、これが何のことだかわからない。円形劇場だから中央にある舞台の右側、左側の区別だろうと思って、私はなんとなく気分で成体サイドを選んだ。

 劇場に入ってみるとなんだかいつもの円形劇場にしては狭い空間がそこにあった。そして配られたチラシを読んで、私はこれから何が行われようとしているかを初めて知ることになった。

 なんと、円形劇場を客席も含めて二分割して、二本の芝居を同時上演しようということなのだ。芝居が始まると目の前で展開されている芝居と背中合わせで別の芝居が進行して行く。後ろとはカーテン一枚で仕切られているだけだから、後ろの芝居で役者さんが喋っている台詞が聞こえてくる。向こう側のお客さんの笑い声も聞こえてくる。チラシの解説によると、別に向こう側で起こっていることは気にしないで、今自分の目の前で演じられている芝居だけに集中してもらってもかまわないそうだ。でも、後ろの芝居で何か大声で叫んでいたり、お客さんが笑ったりすると、ついつい気になってしまう。

 二つの芝居、どちらにも出演している役者さんもいて、何かのタイミングでカーテンの隙間から向こう側に顔だけ出して台詞を言ったりする。

 成体サイドで行われている芝居は、女性二人組の詐欺師の話。その詐欺がばれて、五百万円を返せと迫られている。一方で反対側で行われているのは、どうやらそのふたりの十年前の話らしいなというのは見当は付くようになっている。

 そして二時間ほどの芝居の中盤に入ったころに、二つの芝居を分けていたカーテンが開けられ、反対側が明らかになる。反対側の客席も見える。ここからは別々に上演されていた芝居がひとつになって進行するという構成。これがなかなか見事だ。

 そして最後はまたカーテンが閉められ、別々の芝居として完結する。

 青山円形劇場でないと、ちょっと成立できないこの芝居。これはなんとか幼生サイドの芝居も観てみたかったなぁ。

11月10日記

静かなお喋り 11月9日

静かなお喋り

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