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客席放浪記

第七回笑福亭三喬独演会

2013年5月11日
深川江戸資料館

 笑福亭喬介は入門8年か。まだ初々しさが少し残るマエセツ役で携帯電話の注意などしながら『狸さい』へ。上方落語らしい大らかさが楽しい。江戸落語だとこうはいかないんだよねぇ。

 笑福亭三喬の一席目は『ぜんざい公社』。三喬の解説によると、もともとあった『改良ぜんざい』という噺を現代的に直そうという事で、何人かの噺家が楽屋で作り上げたらしい。その現場って楽しそうだなぁ。三喬に言わせると、いわばシーラカンスネタだそうで、これをさらに現代的にしようとする試みはあるようだが、やはりそのまま演じられることの方が多いそうだ。昭和40年代に公団住宅に入居するために、婚約証明書の提出を求められたという実体験のエピソードをマクラにする。なんでもいいから書類とハンコなのは今でもあまり変わらないけどね。

 ゲストは古今亭志ん輔『明烏』。一夜明けて甘納豆ではなく、砂糖漬けの小梅を食べている源兵衛さんだかたすけさん。そういえば昔私が泊まった旅館のお茶請けは小梅に砂糖を付けて食べるものものだった。最近はあまりこういうの見かけないけどね。ウブだカワイイと花魁たちに人気になってしまった若旦那。あれほど嫌がっていたのに花魁にいようにされちゃってる。源兵衛たちの怒ること。「なんで昨日のうちから、その了見にならないの?」

 笑福亭三喬の二席目は『初天神』。三喬が中学生の時にこれを聴いたのがキッカケで落語家になろうと思った噺とのこと。Child Of Tiger ことトラちゃんがカワイイね。おとうさんが阪神タイガーズファンだったのかなぁ。

 仲入り後の三席目は『質屋蔵』。マクラでは菅原道真の仕込みはなく、そのかわり質屋の仕組みについての、解りやすい解説が入った。これで“利上げ”の意味がスッキリと伝わる。いずれにしても、今では質屋の制度を知っている人も少なくなってやりにくい噺だが、三喬は楽しく噺を進めていく。消費者金融じゃ、こういう噺にならないものなぁ。菅原道真も今の人はピンと来ないかもしれない。でも不思議なもんで落語という分野は、それでも面白く聴けてしまうんだよなぁ。

5月12日記

静かなお喋り 5月11日

静かなお喋り

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