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客席放浪記

柳家さん喬一門師弟四人会・夜の部

2013年12月7日
イイノホール

 昼夜興行で出演者は同じながら出し物も違うとの事で、昼からの居残り組も200人いたそうだ。イイノホールはキャパシティが500だから、半分近くがそのまま見続けていたことになる。前座を抜かして昼夜とも六席ずつ三時間半。一席あたりの持ち時間が30分。昼夜通しで聴いた人は、さぞかし疲れただろう。七時間だもの。私は昼間は国立劇場での歌舞伎。そこからこっちに回ってきた。それでもやはり疲れた。やはりハシゴはキツイ。

 開口一番、前座さんは林家なな子『味噌豆』。なるほど、女性の落語家だと定吉がアニメ声になるんだなぁ。かわいい。

 柳家喬太郎はマクラで、ナツメロ、若原一郎の『おーい、中村君』を三番まで歌って見せ、歌詞に関する考察が始まる。それが的を突いていて可笑しい。どうもこの会、なにしろひとり30分の持ち時間だから、いきおい大ネタばかりが並んでしまいがち。そこでどうやら喬太郎は息抜きの役に回ったらしい。長いマクラで持ち時間の半分を使った。「ちなみに、私のあとに出る弟弟子の柳亭左龍は本名中村ですから、出てきたら『待ってました』ではなく『おーい、中村君』と言ってあげてください」
 そしてサッと『首ったけ』。10月の笑福亭三喬との会でも聴いたが、とにかく花魁が色っぽい。

 その中村君、柳亭左龍は、柳亭をりゅうていではなく、やなぎていと呼ばれるという愚痴から『鹿政談』へ。六兵衛さんの人物造形がうまく演じられていて、気持ちよく聴けた。上手くなったよなぁ、この人。

 そのあと出てきた師匠の柳家さん喬も、左龍の高座を袖で聴いていて、よかったとベタ褒め。いいなぁ、師匠にそう言われるなんて弟子もうれしいだろう。師匠に褒められる噺と言えば、そのさん喬の『中村仲蔵』もそういう噺。入れ込み過ぎない語り口はちょうどいい。
 ん・・・待てよ、喬太郎の、おーい中村君に始まって、中村君が出て、ここでも中村か? 中村縛り?

 仲入り後は、このあと鈴本でトリを取る柳家さん喬がクイツキ。今のお客さんはお目当ての落語家を聴きに落語会に行ってしまうが、ぜひ寄席の方にも足を運んでくださいと挨拶して、『浮世床』。のろけ話をする男の心境ってわからなくもない。酔ってそんな話をする奴っているものなぁ。うふふ。モテる奴はいいね。

 柳家喬太郎は、昨夜の仕事先岩国での体験をマクラにする。これだけで15分近く持たせてしまうのだから、この人の話術は凄い。あとから思うと、そうたいしたことを言っているわけでもないのに、面白く聴かせてしまう。旅仕事といえばビジネスホテルということで入って行ったのが『聖夜の鐘』。これもねぇ、よく考えるとダジャレのワンアイデアみたいな噺。それを一席の落語として面白く聴かせてしまう。思わず帰りに[CoCo一番屋]のフライドチキンカレーを食べてしまった。ウハハハハ。

 トリは、この秋に真打になった柳家喬之助『子別れ・子は鎹』。亀ちゃんが毛糸を巻く手伝いをするとき仕草が難しいだろうなあと思ってみていたが、ちゃんとものになっている。おや? いじめっ子の名前がなかむらだ。この噺、いつもなかむらさんだっけ?

12月8日記

静かなお喋り 12月7日

静かなお喋り

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