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客席放浪記

第十五回東西笑いの喬演

2013年10月5日
国立演芸場

 笑福亭喬若『手水廻し』。手水(ちょうず)という言葉を知らない地方の人が出てくる古典落語ではあるが、神社へ行けば必ず身を清めるための手水舎というものがあるはずだから、知らないというのは不自然だよなぁと思っている噺。聴くたびに、このことが頭にひっかかる。でもいいのか、落語なんだもの。でも洗面器に入れてきたお湯を飲むかぁ。いいのいいの、落語なんだから。

 泥棒噺を得意とする笑福亭三喬は、仲間内で泥棒顔をしていると言われるそうだが、泥棒顔ってあるのかしら。「よく刑務所の慰問に呼ばれるんですよ。なんで私ばっかりかと思ったら、受刑者のアンケートで私が一番人気があるんだそうで・・・。なんでも、一番落ち着くからって」。受刑者の前でも泥棒噺をしているのかなぁ。一席目はそんな泥棒噺の『花色木綿』。そうだよなぁ。やっぱりこの人に泥棒噺は合っている。

 一方、柳家喬太郎は懐かしの池袋地下街にあった、[すなっくらんど]の話から。いやー、私も金の無かった学生時代によく利用したっけなぁ。文芸坐で旧作を観て、行きか帰りに[すなっくらんど]で立ち食いのカレーかなんかを食べるのが楽しみだった。それがいつの間にか無くなってしまって、その次に出来たのが[グランドキッチンみかど]。ここも何でも安くて、なんともそれが池袋らしくて、どことなく猥雑でよかったんだよなぁ。「それがですよ! この[グランドキッチンみかど]がですよ。去年閉めやがったんですよ。そのあとに何が出来たと思います? [Ike麺Kitchen]ですよ! 若者喜ばしてどうするんですか!」 わかるわかる。そこから池袋の街のポン引きの話に持って行って、それを廓噺の『首ったけ』に繋げていく。さっすが喬太郎。そしてまたこの『首ったけ』に出てくる向いの女郎屋の若柳って花魁が喬太郎にかかると、なんともエロチックな事! こ〜んなエロい花魁だったら男はイチコロだよ。それをあの体型の喬太郎が演ってゾクゾクッとなるほどエロチックなんだから落語というものは、また面白いんだよね。

 仲入り後の柳家喬太郎の二席目は『夜の慣用句』。もうすっかり手慣れた喬太郎の新作で、余裕の一席。楽屋へ向かってクスグリを入れてみたり、もう自由自在。

 そしてトリの笑福亭三喬は、上方噺の大ネタ『三十石夢乃通路』。それでも三喬という人は気負いが無いというか、自然と入っていく感じ。肩がこらないで、スーッと三十石船の世界に入っていけた。この構えない軽さがいいんだなぁ。

10月7日記

静かなお喋り 10月7日

静かなお喋り

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