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客席放浪記

柳家さん生独演会/落語版・笑の大学

2014年2月19日
内幸町ホール

 「今は、外科というだけでも、形成外科だの整形外科だの、いろいろ別れておりますが、昔はといいますと、歯医者、医者、産婆くらいしかありませんで」と、柳家さん生の一席目は『藪医者』。『金玉医者』の前半部分を独立させた噺で、なんとものんびりした噺。藪医者と知れ渡っちゃ、患者さんが誰も来なくなる。昔はそんな医者もいたかもしれない。

 春風亭ぴっかり☆は、二ツ目になってもう二年か。前座時代、ぽっぽだったころに何回か観た記憶がある。「20代後半を、すべて毎日八つぁん熊さんで消費してきまして、気が付くと周りはみんな結婚して、子供まで生まれてる。『結婚しました』『名前が変わりました』ってハガキが届くようになりまして、悔しいから私もハガキ出してやりました。『ぽっぽからぴっかり☆に名前が変わりました』」
 噺は、師匠の小朝に教わったという『元禄女太陽傳』。私は初めて聴く噺だ。インターネットで調べてみると、1993年の『欽ちゃんのシネマジャック』というオムニバス映画の中の一本に、同じタイトルの短編があり、それを落語にしたのかもしれない。自ら進んで吉原の女郎になった女と大石主税の噺。小朝が演るのもなんとなくイメージできるが、ぴっかり☆だと少女ギャグまんがっぽくなって、これはこれで面白い。いい噺を選んだものだ。
 立ち上がって、踊り『松づくし』。

 仲入り後に、いよいよ柳家さん生『笑の大学』。私は三谷幸喜の芝居は観ている。なんでも、さん生は三谷幸喜と同じ日大芸術学部出身なんだそうで、三谷とも以前から顔見知りで、三谷の芝居を落語にしてみようということだったらしい。結論から言うと、うまく落語に持ってきたなぁという感じ。芝居と落語は本質的に違うものだから、芝居で観た『笑の大学』を期待してはいけない。この芝居は二人しか登場人物が出てこないが、そのふたりの役者の丁々発止のやりとりが見もの。一方、落語版では、落語の世界に、この脚本家と検閲官を呼び込むという作業が必要だと思う。さん生は、やはり芝居を意識しているかなぁと思わせるところもあったが、芝居を見事に落語に引っ張ってきたと思わせた。西村雅彦の演じた検閲官は、やたら怖い印象だったが、さん生の検閲官はどこか落語世界の住人に見えてくる。芝居と落語は別物。なにしろ尺が長い噺なので、滅多に聴けることもないだろうけど、またどこかで聴いてみたい。

2月20日記

静かなお喋り 2月19日

静かなお喋り

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