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客席放浪記

月例三三独演

2013年10月11日
イイノホール

 開口一番、前座さんは柳家小かじ『道具屋』。前座修業頑張ってね。

 柳家三三一席目は、親不知を抜いたというマクラ。我慢できないほどの痛みに飛び込んだ歯医者で、「もう抜けたも同然」と言われながら40分もかかったという体験談。私は親不知が無かったのだが虫歯を抜いた経験はある。私の掛かりつけの歯医者さんは名医で、まったく痛くなかったし、抜かれているという感覚すらなく済んでしまった。腕なんだな。そこへいくと、そこから入った『手紙無筆』はいい腕の職人、三三らしさが出て面白い。こういう他愛もない噺を面白く演れるというのは腕がいいって事。

 二席目は『甲府ぃ』。これは私はどうも説教臭くて好きになれない噺。甲府から一旗揚げに出てきた男が、豆腐屋で一生懸命働いて跡を継ぐ。これもねぇ、たまたまこの男が豆腐屋職人に向いていたってことで、人間一生懸命働いてもモノにならない事ってあるんだよなぁ。落語家だって同じ。三三はたまたま落語家に向いていたって事なんだろうけど。

 仲入り後の三席目は『笠碁』。三三の『笠碁』は三年前に一度聴いているが、この人の『笠碁』は私はかなり好きだ。三三はまだ(かろうじてだが)30代だが、老人をやらせると上手いなぁ。とくにこういう偏屈な老人。暇を持て余している囲碁好きの老人が、「一手待ってくれ」「待てない」で喧嘩別れするって、いかにもありそうだし、それをまだ若い三三が見事に見せるんだものなぁ。「一手待ってくれと言うんじゃない。一手無かったことにしてくれと・・・」「それは一手待ってくれと言うことじゃないか」っていう屁理屈を通そうとする老人って絶対にいる。別れてから「自分さえよければいいってもんじゃない」なんてという自己正当化したがる思考も確かにありそうそうだし。
 三三があと20年〜30年してからの『笠碁』って聴いてみたいけれど、そのころはもう私は死んでいるだろうな。

10月12日記

静かなお喋り 10月11日

静かなお喋り

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