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客席放浪記

月例三三

2016年8月5日
イイノホール

 『BS笑点』若手大喜利で評判がいいらしい、二ツ目の柳家わさびが開口一番。落語家は落語だけやっていれはいいなんていうことも言われるが、「志ん朝師匠だって時代劇のレギュラーやったりしてしましたし、三三師匠も大喜利お得意ですし、以前、[マクドナルド]のCMにも出ていたことあるんですよ。あんこパイという商品の宣伝。私もね、笑点大喜利で褒められたりしましたけれど、『落語はどうなんだ』と言われたりしまして・・・」
 こんなマクラでハードル上げちゃってどうするのという感じなのだが、『ちりとてちん』へ。
 鯛の刺身、うなぎの蒲焼を勧められ、「私、聞いたことはあるが、食べるのは初めて」とやってから、なんと[マクドナルド]のあんこパイを勧められる。「外はパリッと、なかはトロ〜リ・・・あとで三三師匠に謝ってこなくちゃ」。

 次に上がった柳家三三。「あれはもう10年以上前ですか、『電波少年』がBSに移ったときに、勝ち抜き落語バトルみたいな企画がありまして、私が優勝しました。そのときの商品が、『笑点』に出演できるというもの。収録先の後楽園ホールへ行きましたよ。楽屋にいたら呼ばれて、着物に着替えないで、そのまま来てくださいといわれて舞台袖でなくて客席に。オープニングで円楽師匠が客席に座っている隣に座らされました。番組が始まって、円楽師匠が私に『どちらからいらっしゃいました?』と訊くので、『あちらから』と答えました。落語家としてでなく一般人として出演したわけです」。
 円楽は三三のことを知らなかったらしい。あらあら。
 『嶋鵆沖白浪(三)』。(一)で登場し、(二)で馬差しの菊蔵、柴山の仁三郎とのいきさつ、それに芸者お虎との関係がこのあとどうなるかと期待を持たせた、この噺の主人公と思われた佐原の喜三郎。なんと(三)では最初にちょっと出てきただけで、巾着切り(スリ)の少年、三日月小僧正吉の話に視点が移ってしまう。これがまた実に波乱万丈で、佃の寄場からの脱出場面のスピーディでテンポのいい面白さときたらどうだろう。これまた、出来のいいサスペンスアクション映画を見せられているかのよう。流れてきたオマルに隠れて脱出するのだが、『野ざらし』にも川でオマルが流れているし、小噺でも川にオマルの流れているというのがある。「昔は、川にオマルが、たくさん流れていたものか、それとも同じひとつのオマルが落語には登場するのか」。アハハハハ。

 三日月小僧正吉の運命はどうなるかというところで(三)は終わったが、『嶋鵆沖白浪』(四)』はまた、佐原の喜三郎も出てこないし三日月小僧正吉も出てこない。いままで登場した人物は誰も出てこないで、まったく別の噺になる。湯島切通しの寺の住職にして破戒僧善念と、それを強請に来た博打打ち手塚の太吉、そしてそのふたりに輪をかけた悪党玄若の三人によるやり取りの面白さでグイグイと引っ張る。これは談州楼燕枝のもとの噺が面白いせいもあるのだろうが、それを現代的な演出に持っていった三三の力が大きいのだろう。

 さあ、これで、この先の噺の展開がどうなるのか、ますます興味が沸いてきた。どうやら登場人物たちが、次々と島流しで三宅島に送られていき、そのあとでまた動きがあるのだろうということだけは見えてきたのだが。う〜ん、待たれる次回9月。

8月6日記

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