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客席放浪記

月例三三

2016年10月19日
イイノホール

 来秋、真打昇進が決まった桂三木男。「芸の精進も大切ですけど、金を貯めなければ」。祖父が三代目三木助、叔父が四代目三木助というサラブレッドだが、花緑、木久蔵といった金持ちの親類を持ったところと違って、真打昇進興行の接待は苦労しそうだと本音をチラリ。このあとやった『三方一両損』みたいに、江戸っ子だからってお金を粗末にしないでね。

 六ヶ月連続の『嶋鵆沖白浪(しまちどりおきのしらなみ)』も半分の三ヶ月を終え、今月から後半に入る。

 一席目、『花咲かじいさん』のお囃子でできた柳家三三。広島カープびいきで、25年ぶりリーグ優勝がうれしくて、まさに「大判小判がザークザークザックザク」の心境なのだろう。「夏にジャイアンツに4ゲーム差に迫られた時には、もうダメだと思いましたよ」と、いくらでもプロ野球の話をしたい感じ。「こんなことを話していると、どっかのやたらマクラの長い噺家と一緒になってしまいますから」と『嶋鵆沖白浪』に入った。

 (七)は、今まで登場した、お虎、庄吉、勝五郎の三人が三宅島に流されて、三人が三人とも喜三郎という人物の不思議な糸で結ばれていることを発見。三人で島抜けを計画し始める。今までの六回に出てきた人物と事件のまとめのような回で、ストーリーの復習にもなる要の一席。そこに江戸を逃れてきた喜三郎も三宅島に。そろそろ江戸に帰ろうか思案しているところに現れた人物は・・・というところで切れ場。

 『千鳥の合方』の出囃子で出てきた(八)。チャンバラの音楽として知られているこの曲。いよいよ物語は動き、島抜けとなる。
 噺の初めの方で、火山活動のために三宅島に行くにはガスマスクが必要だというのでガスマスクを買ったが・・・という笑い話の陰に、三宅島で水不足になると雨乞いの儀式があったという何でもないようでいて、実は後半に大きく効いてくる伏線を入れ込んでいるのは見事。
 お虎、庄吉、勝五郎に、喜三郎が合流。さらに土壇場で玄若まで現れ、五人で島抜けとなるのだが、ベタ凪の海を帆を張って、果たして風があるのかは疑問のあるところだが、船は海へ出る。玄若が船酔いする性質だという笑いも織り込んで、ここからは嵐と、それに挟まった船幽霊の冒険談。いや〜、これは大スペクタルだわ。
 銚子の浜に流れ着いたところで本日の読み切り。おお、これからは、かの因縁の馬差しの菊蔵のことがどうなるかが興味の中心。待ち遠しいぞ、来月!

10月20日記

静かなお喋り 10月19日

静かなお喋り

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