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客席放浪記

月例三三独演

2016年11月10日
イイノホール

 今月の前方役の二ツ目は春風亭正太郎。五年くらいの前から「正太郎がいいよ」という話を耳にしていたが、ほとんど聴く機会がなかった。思い出してみると四年前の九月に、やはり『月例三三独演』で聴いたくらい。あのときは『棒鱈』だった。
 「昨日のアメリカ大統領選、ドナルド・トランプ勝利。びっくりしましたね。、今回はヒラリー・クリントンもドナルド・トランプも高齢者同士の対決。やはりトランプというだけに、ババを抜くのが上手かった」。
 噺は『そば清』。そば清さん、そばの曲食いをやる。そばを食べながら、うどんをすする音を出す。そばを食べながら、きしめんをすする音を出す。そばを食べながら、とろろそばをすする音を出す。ウハハハハ。
 正太郎いいなぁ。どことなく三三の芸風とも似ている。

 さて柳家三三『嶋鵆沖白浪(しまちどりおきつしらなみ)』。今日は(九)(十)
 (九)島抜けをして銚子の浜に辿り着いたところから。喜三郎とお虎は江戸を目指す。
 一緒に島抜けした勝五郎、庄吉、玄若は別行動だが、この先(十)になっても出てこなかった。どう考えても彼らも江戸へ行きそうなのだが、大団円に向かって彼らの登場はまたあるのだろうか?
 江戸へ向かう途中で、駕籠かきの追剥に合っている現場を目撃。この追剥が、なんとなんと、喜三郎とお虎が(二)以来恨みを持って捜していた馬差の菊蔵というのが、この手の噺のご都合だが、駕籠のなかの人物が喜三郎の腹違いの弟吉次郎というのは、あまりにご都合。でもそれを許してしまうのが日本の因縁噺ならではの展開。このあとの菊蔵殺しは凄惨。語りだから聴いていられるが、映像だったら耐えられないだろう。
 (十)江戸に戻り世帯を持った喜三郎とお虎。日本橋岡崎町に居を構えたというのだから、西八丁堀近辺。
 喜三郎は博打にのめり込んで浜町の賭場通いだがどうもついてない。
 お虎は湯屋に行った帰りに女性同士でお喋りをしてさっぱりした気分。「どうも女性というのは人に自分の話を聞いてもらいたいらしく、話すとすっきりするらしい」との三三の解説が入る。「どうも男の私にはわからない」。同感です。
 お虎はそのとき道で、吉原で馴染み客だった畳問屋の番頭の姿を見かける。そこで一計を案じ、この番頭を口八丁手八丁で、たらし込む。あとは喜三郎の出番。「オレの女房に何をした」という美人局の強請の手口。と、その強請の現場に居合わせた浪人がひとり。今は名前を変えているが、この男誰あろう、お虎が吉原に火を放った元を作った張本人、梅津長門・・・ってこれまたご都合の展開。しかもその場面とカットバックするように、馬喰町の大きな宿に宿泊した男と、それを訪ねてきた娘の場面。まるで映画のモンタージュ手法のようになるこの終盤が、いよいよ大団円の次回への布石らしい。これもどうやらご都合っぽい因縁を孕んだ登場人物だなぁ。
 さてどうなるか。(九)のマクラでは、三三が先日千葉で行われた、振り込め詐欺撲滅キュンペーンの会で一席やったときの話をしていた。「私の噺だってわかりませんよ。来月で『嶋鵆沖白浪』は終わりと言っておきながら、一月にまた続きをやってるかもしれない」。う〜、来月で終わってしまうのは惜しい。詐欺でもいいから、もっと聴かせて。

11月11日記

静かなお喋り 11月10日

静かなお喋り

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