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客席放浪記

月例三三独演

2016年12月8日
イイノホール

 半年間に渡った『嶋鵆沖白浪(しまちどりおきつしらなみ)』今日が(十一)と(十二)で、完結の日。続きが楽しみで毎月楽しみにしていた。

 今年、師匠の喜多八を亡くした柳家ろべえ。来年三月に真打昇進が決まったと話すと大きな拍手が沸いた。「やじろべえと付けるところが、まだ半人前ということで、ろべえ。お客さんから野次を貰えば、やじろべえです」という語りだしも、どこか寂し気に感じてしまう。脱力系の語り口は師匠の喜多八を彷彿とさせるようなところもあり、喜多八の芸風を継承していくのかなと思わせる。噺の『替り目』も、騒がしい酔っぱらいではなく、すっかり力が抜けたている。おでんを買いに行こうとする女房に、なぜ食べたいネタを聞いて行かない。食べたいおでんネタを食べずに明日死んだら悔やんでも悔やみきれないと呟く。なんかカワイイ酔っ払いだね。

 柳家三三も出てきて「力いっぱい落語をやろうとしても受けないことがあります。これをちょっと力を抜いてやると受けたりする」と話し出した。これは古今亭志ん朝もよく言っていたこと。若い落語家は勢いだけでやってしまうことが多いけれど、勢いだけって、聞いている方は疲れちゃうんだよね。
 『嶋鵆沖白浪』、島抜けのあと、前回の(九)(十)では喜三郎と花鳥ことお虎のことのみが語られていたが、残る三人のうち勝五郎と庄吉の、その後のことが(十一)で語られた。ここはいわば島抜けまでしての復讐譚。胸のすくような噺で、これぞエンターテイメント。復習を果たした後、自首して出て処刑されるのもスッキリした終わり方だった。
 一方、(十二)では、喜三郎とお虎の結末。島抜け後、語られることのなかった最後のひとり、私が一番面白いと感じていたキャラクター玄若が、落ちぶれ果てた姿で登場。つくづく最後まで哀れな人生を歩んでしまった男だよなぁ。喜三郎とお虎の住む家に転がり込んだものの、半分気がふれていて、大きな寝言も言い出す始末。これはまずいとお虎が玄若を殺害するところは、なんとも恐ろしい。
 結局、序盤で貴三郎に惚れていたお虎は可愛い女てあったのが、どんどん悪くなっていき。ついには化け物のような性格の女に成り果てていたというのが結末。
 数奇な運命を辿って、いい死に方ではないけれど畳の上で死ねた貴三郎という人物も、哀れだなと思う。
 長い小説を読み終えたというような満足感で[イイノホール]を出た。
 私としては、島抜けまでのところまでが一番血沸き肉躍る展開で好きだった。そのあとはいかにも日本の因縁噺になって行ってしまったのが、やや失望だったかな。
 とはいえ、また機会があったら、ぜひ通して聴いてみたいものだ。

12月10日記

静かなお喋り 12月8日

静かなお喋り

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