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客席放浪記

殺人者フジコの衝動

2015年4月19日
全労済ホール/スペース・ゼロ

 真梨幸子原作のイヤミスの舞台化。元モー娘。の新垣里沙、元AKB48の平嶋夏海が出演するとあって、客席はその手のファンらしい人の姿も多い。もちろん完売で当日券無し。

 物語は小学生の時から、いじめの対象になっていたフジコが転落の人生を歩んで行ってしまうといったストーリー。ああ、これは山田宗樹の『嫌われ松子の一生』に似ているなと思ったが、こっちの方はとにかくイヤミスでもあるから、フジコは殺人にまで関わってしまいドロドロの内容。しかしこれはあくまで舞台ということもあり、演出などはあまりグロにはしていない。

 この芝居は再演ということもあるのだろうが、主演の新垣里沙がいい。特にこの芝居では主題歌のようにしている『夢見るシャンソン人形』を、何回か歌うのだが、この歌唱力はなかなか。さすがモー娘。で歌っていただけのことはある。ただこの際、訳詞も思い切って変えてしまった方がよかったんじゃないか。今多く使われている訳詞だと口当たりが良すぎる。元歌のちょっとグロテスクで皮肉な感じを残して新しく作り直した方がこの芝居に合っているような気がするのだが・・・。

 ひとりの女性が子供のころから転落の人生を転がって行くストーリーの上に、けっこう込み入った複雑な話なので、この上演時間では伝わりきれない感があって、原作を読んで行けばよかったなぁという思いだった。

 一応の結末がついてカーテンコールがあって、ちょっと物足りなさが残ったところで、実は続きがある。どうやら原作では、あとがきに当たる部分をうまく芝居に持って来ているらしい。ん? ハプニングか? と一瞬錯覚するが、そんなわけはなく、これはまだ芝居が続いているんだなと気が付く。しかしこれがイヤミスたる所以で、観終ってから、なんとも反応しがたい感じが残る。拍手の音も疎らで遠慮がちだったのも、さもありなんだが、こういう変な幕切れ、カーテンコール、拍手なしの芝居って、私は慣れているからね〜。そんなに驚かないのだよ。

4月20日記

静かなお喋り 4月19日

静かなお喋り

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