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客席放浪記

社長吸血記

2014年10月19日
本多劇場

 ストーリーを書こうとしても、ちゃんとしたストーリーが書けない。じゃあまったくストーリーが無いのかというとそうでもない。今回もケラリーノ・サンドロビッチの世界に引きずり込まれ、なんだかよくわからないけれど、観ている間はやたら面白いといった芝居。

 タイトル自体あまり意味が無く、別に吸血鬼が出てくるわけでもない。とりあえず会社ものの芝居を書こうとして、東宝の『社長漫遊記』あたりをもじって付けたタイトルらしい。社長シリーズは昭和30年代の高度成長バリバリのモーレツ社員時代の中で、どこかのんびりしたサラリーマン喜劇だった。ところがケラが作りだしたのは、一般市民になにやら怪しげな契約を結ばせて解約に応じない悪質な会社とその社員たちの話。そこに探偵やら、隣のマンションに住む住人やらが絡み、この建物で以前に会社をやっていた人たちが集まってきて会社ごっこを始めたりと、もうなんだかいろんなことがごちゃまぜに進行する。社長は三か月も前になぜか失踪していたり、死体が空から降ってきたり、なんだかよくわからない。

 深読みすれば意味があるような、いや、もともとあまり意味なんてなくって、ケラの頭の中で浮かんできたイメージが勝手に動き回っているだけのような。でも、これがつまらないのかというと、そういうわけでもないという不思議な芝居だった。ようするに、そういった空間で二時間半、なにか夢でも見ているように楽しめばいいのかもしれない。

 ナイロン100℃の芝居は、観に行ったり行かなかったり。今度の芝居はコントのかもめんたるが出ているということがチケットを買おうと思った一番の理由。お笑い要員だと思っていたら、彼らの出番にはほとんど笑いが無くて、純粋に役者として使いたかったらしい。

 存在感の強いのがやはり大倉孝二。二役だがどちらもあの大きな体がものをいって迫力ある。

 そしてなんといっても鈴木杏ですね。いい女優になったよなぁ。

10月20日記

静かなお喋り 10月19日

静かなお喋り

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