渋谷らくご しゃべっちゃいなよ 2018年2月13日 ユーロライブ 新作ネタ下しの会。 桂三四郎は、今まで『渋谷らくご』には、この『しゃべっちゃいなよ』しか出たことがなく、公演当日この建物が近くなると吐き気がすると言う。それだけ新作ネタ下しは緊張するものらしい。この手のものは他所でも以前にあって、その楽屋が緊張感に包まれているという話は聞いたことがある。高座を終えて降りて来た演者は開放感なのか、スッキリした顔になるそうで、今日彦いちが言っていた言葉を引用すると「注射を終えた生徒たち」。アハハハハ・・・って、笑っちゃいけない。彼らは真剣なのた。 噺は、酔っぱらって帰って来た男が朝起きてみたら、知らない男が部屋にいる。酔っぱらったあとの記憶が無くなっているので、男に「あなたは誰?」と訊いてみると、この男も酔っぱらっていたそうなのだが、酔っぱらったあとのことは憶えているが、酔っぱらう前の記憶がすっかりなくなっていて自分が誰だかわからないと言い出す。 タイトルは『記憶飛』。自分が誰なのか持っていたケータイを調べたりというところが面白い膨らみを見せる。オチも「なるほど」というもの。 柳亭小痴楽は古典一本の人かと思ったら新作にも挑戦してきた。知らなかったが以前にも一度、別の話を作って演ったことがあるらしい。 タイトルは『目配せ』。このタイトルで、ストーリーを少しでも書いてしまうとネタバレになってしまいそう。ヤクザの手打の噺とだけ書いておこう。噺は面白くできているが、やはり新作の作り方に慣れていないらしくて、噺の持って行き方がちょっとたどたどしいのと、やや長い気がする。うまく整理し直せば、もっと聴きやすく面白くなりそう。 鉄道落語で名を売った古今亭駒次は、今日は鉄道を離れてヤクルト販売員の噺『ヤクルトレディ関根さん』。スワローズの低年俸の選手を夫に持ち、自分もヤクルトレディをやっている女性。さっぱりヤクルトが売れなくて困っているところに、80歳を過ぎてまだヤクルトレディをやっている関根さんという先輩が現れる。関根さんは彼女を元気づけるために脇の下で温めたヤクルトを飲ませると、みるみるやる気が出てくる。この関根さんの正体とは・・・。 駒次の作る噺は、最近やたらリキが入って来た。 瀧川鯉八の『ひとでなし』。誰かに靴の中に画鋲を入れられたり、知らないうちにいろいろと嫌がらせを受ける少年。クラスメイトが犯人だと思い、いたずらの現場にはいつもいない級友に相談する。相談に乗って犯人を推理してくれるのだが・・・。 先日二回聴いた『多数決』も子供の世界の噺だったが、この分野はまだまだネタになりそう。 林家彦いちは、今の世界の隣にあるパラレルワールド。違いは人間がみんな翼をもっているこという『つばさ』。渋谷で落語会を終えた主人公の彦いちは、次の仕事浅草演芸ホールへ翼を広げて飛んで行く。翼を持った世界だから当然、落語のなかの世界も翼を持った人物ばかり。『芝浜』の魚屋もおかみさんに起こされて芝まで空を飛んで行く。ところが空間のゆがみから翼のある世界から彦いちは、今の私たちのいる世界の彦いちに入り込んでしまう。翼を失った彦いちだが・・・。 サゲがふたつあり、最初のサゲはきれいに終わるもの。もうひとつはさらにパラレルワールドが広がってしまうもの。私は後者が好きかな。 2月14日記 静かなお喋り 2月13日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |