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客席放浪記

志の輔らくご in Parco 2015

2015年1月27日
Parco劇場

 立川志の輔が、毎年恒例にしている一ヶ月興行。一人で三席、三時間近くを喋り通す。一人で三時間喋る、しかもそれを一ヶ月続けるなんていうのはほとんど神業に近いような気がする。今回も新作二席と古典一席という構成。

 一席目は、今年一月二日に故郷の富山に飛行機で帰ろうとしたら、富山は大雪。富山空港行きは欠航で、小松空港行きの飛行機に、着陸が無理となったら羽田に引き返すという条件で搭乗したという話から始まって、出迎えのマネージャーが富山から小松まで高速を運転して大変な思いをしたらしいといったことを話し、さらにはマネージャーがケータイを失くしたという話まで、このマクラだけでも聴いていて、もうすでに一席終わったんじゃないかと思えるおもしろさ。そこから新作『スマチュウ』。オジサンのところに借金を頼みに来た甥が、ずーっとスマホを見続けていることに怒りだす。人に頼み事、とくに借金を頼みに来て、相手の目を見ないでスマホばかり見ているというのは、いかになんでも、そんなやつはいないだろうとは思うが、スマホ中毒になっている人間っているよなぁ。落語聴きに来て客席で、ズーっとスマホ見ていた人を目撃した事があるが、なんなんだろうね、そんなスマホ中毒の人をちょっぴり皮肉りながら、スマホ社会になってしまった現代を笑いにしてみせる。目の付け所もいいけれど、料理の仕方も上手いね。

 二席目は古典『三方一両損』。最近自分で薄々感じていたのだが、私、この噺が嫌いなんだね。財布を拾って届けてやった奴の言い方も嫌だし、受け取った方の言い方も嫌。あれを江戸っ子だと思われちゃあ堪ったもんじゃない。江戸っ子っていうのは、もっと相手を気遣って生きているものだ。そして大岡越前だ。この人物がもっと理解できない。それは志の輔もそう感じたのだろう。大岡越前を徹底的にバカにしている。喧嘩したふたりに二両ずつ渡したところで、二人が納得するとは思えない。もっと変なのは大岡越前自身。自腹で・・・いや、違うな。どこから出た金だか怪しい・・・もう一両加えて、三方が一両ずつ損をしたという形で収めるって、そんなのアリか? 大岡越前ひとりが悦に入ってるだけじゃんか。嫌な噺。私に言わせれば三方バカ。

 三席目は、今まで富山にちなんだ噺というのは古典になかっただけでなく、自分も作らなかった。三月に北陸新幹線が開通することを記念して作った新作『先用後利』。富山の薬売りの噺。うまく富山の薬売りを美談として盛り立てる噺。まあ富山のイメージアップのために作ったような噺。短くすれば20分もあれば出来そうな噺なのだが、これを一時間以上の噺にしている。いいんだけど、ちょっと長いなぁと感じたのは私だけだろうか?

1月28日記

静かなお喋り 1月27日

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