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客席放浪記

志の輔らくご in Parco

2016年1月26日
Parco劇場

 Parco 取り壊しのため、20年続いたこの催しも、今年がファイナル。名残惜しいけれど、物事にはいずれ終わりがある。立川志の輔以外でも、この劇場は私が一番好きな劇場だっただけに惜しい。客席のどこから観ても、こんなに観やすい劇場はなかった。座席も座り心地がよかったしね〜。

 毎年日本人からノーベル賞受賞者が出たりして、日本人って優秀なんだなと思う反面、バカなことをやっている人も一方でいるといったマクラから、新作『大黒柱』。保険金が満期になって、そのお金で日光鬼怒川に家族旅行に行こうと言い出すお父さん。ところがちょっと天然なのがお母さん。旅行社に日光鬼怒川のパンフレットを貰いに行くはずが、ローマ5日間ツアーの契約を決めてきてしまう。『ハンドタオル』に出てきた夫婦が再登場したような可笑しさ。かわいそうなのはお父さん。「オレの金で!」と言いたくなる気持ちもわかるね。この夫婦のシリーズ、もっと聴きたいぞ。

 二席目は、旭山動物園のペンギンとオラウータンの話から『新版猫忠』。へえ〜、『猫忠』とは珍しい。この噺かける人は滅多にいないもの。私も最後に聴いたのはいつだろう。圓生の録音くらいしか記憶がない。へえ〜、こんな噺だったっけ。登場人物がみんな志の輔流になっているところが面白い。

 三席目が『大河への道』。つい最近この志の輔らくごin Parco で聴いたばかりと思ったが、帰ってから調べてみたらここでかけたのは2011年。あれから5年たっているのか。着想から完成までに5年かかったというから、今年で10年を迎えたことになる。地噺の伊能忠敬の説明部分から現代、そしてクライマックスでは当時の様子を、もうひとつの落語として聴かせるという三部構成の80分。志の輔自身、苦労して作ったという労作。それをファイナルの今年に再演した。なにしろ長い噺だから、なかなか聴く機会はこれから先もないだろう。いつかまたどこかでこの噺に出会うことができたら、それはそれはうれしいだろう。できることなら、2018年、伊能忠敬没後200年の年、NHK大河ドラマで伊能忠敬が取り上げられることを祈りつつ、それと同時に志の輔の『大河への道』が何らかの形で口演されることを願ってやまない。

1月27日記

静かなお喋り 1月26日

静かなお喋り

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