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客席放浪記

志の輔らくごinPARCO

2014年1月8日
PARCO劇場

 恒例、立川志の輔のパルコ一ヶ月。今年はインターネットなどで前情報が目に入る前に、なるべく早めに行っておこうとこの日を選んだ。、

 「エイのヒレはどこからどこまでだ」「キリンの首はなぜあんなに長いのか」といった問答がマクラのような導入部になる『こぶ取り爺さん』。うわー、これ久し振りに聴いたぞ。調べてみたら2004年12月、まだ一ヶ月興行が始まる前のPARCOだ。自分の書いた文章を読み返して思い出した。あれにもう一度手を入れて作り直しているんだ。以前のバージョンは、外国人が『こぶ取り爺さん』の噺の意味が解らないという形で持ってきたんだった。そしてさらに『かぐや姫』にまで言及してた。それを『こぶ取り爺さん』一本にして、よりスッキリさせた形。10年を経て、まだ進化してるんだな、この噺。

 二席目はネタおろしの新作『モモリン』。ゆるキャラの着ぐるみのアタマを被ってしまった市長さんが、その被り物が絡んでしまって抜け出せなくなる事からのドタバタ劇。あいかわらず目の持っていきどころがいいなぁ。

 仲入りを挟んで三席目が『井戸の茶碗』。普通、この噺は30分ほどの尺で収まる。それを志の輔はなんと60分。別にゆっくり話しているわけではない。出だしなどテンポがいいから「これは30分かからないな」と思っていたのだが、終わってみれば1時間が経過していた。まあ、千代田卜斎の娘が美人であるとかの仕込みとか、屑屋の清兵衛の家が高木佐久左衛門の家の前を通らないと行かれない位置にあるとかの十分すぎる説明もあるが、やはり志の輔、饒舌なのかもしれない。清兵衛と千代田、清兵衛と高木の会話がかなり膨らませてある。なにもこんなにも膨らませなくてもいいのではないかというくらいなのだが、それが清兵衛の、オレを使いに立てないで本人同士が話せばいいじゃないかという思いに繋がる。この噺は悪い人がひとりも出てこないわけではあるが、よく考えると武士の傲慢さは感じるなぁ。なんの落ち度もなく、ただ親切にした清兵衛がひとりだけ貧乏くじを引かされるわけで、たまったもんじゃないやね。私も以前これに近い経験をしたことがあるだけに、この噺を聴くと「いいかげんにしてくれ」と清兵衛さんに同情してしまうんだよね。私にとってはそんな噺。

1月9日記

静かなお喋り 1月8日

静かなお喋り

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