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客席放浪記

2012年7月28日深夜寄席

 花助、きらり、夢吉、鯉八という顔付けは、今の芸協の二ツ目の中で、「観に行きたい」と思える魅力的なもの。深夜寄席はついつい億劫になって行かなかったのだが、久しぶりに行きたくなった。

 夢吉さんが立札を持って立っている列の後ろに着く。花助さんときらりさんがチラシ配りと料金徴収で回ってくる。花助さんに「御無沙汰です」と挨拶。そのあとどんどん列は長くなっていく。

 21時15分開場、21時30分開演。

 三笑亭夢吉は、深夜寄席の列の前に立札を持ってたっているときに寄ってくる一般人の話で、お客さんとの一体感を掴む。「よく『うわー、凄い。こんなに並んでる』って感心してくださる方がいます。が、そのあとがいけない。『知ってる人一人も出てないのに』。『誰が出るの?』と聞いてくる人がいます。それで、『えー、夢吉とですね』と言った途端に『あっ、もういいです』と言って居なくなってしまう人。あるいは『誰か出るの?』とおっしゃる方もいます。そりゃあ誰かでますよ」と『鷺とり』へ。

 そのあとの瀧川鯉八がマクラでやった、テレビ・インタビューというのが可笑しかった。外国人の男性が、ビフ叔父さんなる人物に騙されて両親が欠陥住宅を買ってしまうという内容なのだが、これがいかにもありそうでしかも突然唖然とするオチが付くといもの。新作『暴れ牛奇譚』も、登場人物のタミコ(民子?)という女性の存在が強烈で後を引く事になる。

 雷門花助『お見立て』のどこか投げやりな番頭がいいなと聴いていたら、ここで番頭がタミコの名前を出すので場内大笑い。すっかりタミコがお客さんにすり込まれてしまったようだ。

 花助が高座を下りて、釈台を出してくる。どうやら久しぶりに持った末廣亭の釈台の重さに驚いたらしい。釈台を置いたあと、手を痛そうにして楽屋に下がる。それを楽屋袖で眺めていた神田きらりが高座に上がるや、「優しそうな顔をして、あれが花助という実態なんですよ」と揶揄するや、花助高座脇へ出て来て土下座。ドッと笑いが来る。こう言う繋ぎも寄席の楽しさ。外の暑さも忘れる『那須与一 扇の的』のキリッとした抜き読みで、この夜も幕。

7月29日記

静かなお喋り 7月28日

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