深夜寄席 2014年5月10日 新宿末廣亭 調べてみたら、最後に深夜寄席に行ったのは去年の3月。もっと行っていると思っていたのに、案外行ってない。去年行ったときはあまり混んで無くて、深夜寄席ブームも影って来たかなと思ったのだが、今夜の深夜寄席ときたらどうだ。椅子席はもとより、左右の桟敷席もギッシリ。さらには後方に立見客が大勢という盛況ぶりだ。膝送りの案内まで出て、とてもこんな時間にやる会とは思えない。 「蟻の行列にお酒をかけると、どうなるか御存じですか? 私やってみました。ワンカップを持って公園のベンチに座っていたら蟻の行列がいたんでね。蟻の行列にお酒をかけようとしたら、ホームレスが『酒をそんな勿体無いことするんじゃねえ!』って」。瀧川鯉八は『わきまえる男』。この噺、聴くの二回目なのだけれど、何なんだろう、この可笑しさは。ちょっとほかに体験できないおかしな噺。雑誌を見たと言えばビール一杯無料という居酒屋に、雑誌見てないけど無料にしてくれという客の延々と続くやりとり。どうってことないっていえばどうってことないんだが、長くなればなるほどおかしさが込み上げてくる。 春風亭昇吉は、あらら、珍しいのを持ってきたなぁ。『稲川』だよ。相撲噺なんだけど地味〜な噺。東京に出てきた大阪の相撲取りが、河岸の連中の贔屓になる噺。乞食に変装した河岸の人間が相撲取りにそばをご馳走して、食べたら贔屓にしてやろうって算段。良く考えると変な噺なんだけど、それをサラッとやって、変だと感じさせないのが芸なんだろうね。 変わった落語が二席続いた所で、三笑亭朝夢は、ここで普通の古典を入れないと次は講談だということで『お菊の皿』。深夜寄席なんだから、みんな実験的なネタやればいいと思うけどなぁ。 トリは神田松之丞の講談。こりゃいい講釈師が出てきたものだ。今夜の大入りもひょっとすると松之丞人気かもしれない。『違袖(たがそで)の音吉』は、向こうっ気の強い少年音吉が侠客の親分に突っかかっていく爽快な噺。それをテンポよく、ときに笑いも入れながら読んで行く。女流講釈師ばかりになってしまった講談界だが、こういう人の登場は頼もしいなぁ。 5月11日記 静かなお喋り 5月10日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |